日本透析医学会雑誌
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症例報告
透析時低血圧で診断に至った薬剤性副腎皮質機能低下症の1例
松本 博村井 誠三
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2020 年 53 巻 3 号 p. 153-156

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抄録

症例は腎硬化症による慢性腎不全で血液透析歴19年の89歳男性. 75歳時に前立腺癌と診断され性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニストを投与されていたが, 内科的去勢抵抗性となったためCYP17阻害薬であるアビラテロン酢酸エステル (AA) とプレドニゾロン5mg/日投与が開始された. 約6か月後より透析低血圧による透析困難症および非透析日の起立性低血圧が出現し, 基本体重を増加したが症状は持続した. 血液内分泌検査でコルチゾールは低値, ACTHは高値, アルドステロンは正常上限を示した. 低血圧はヒドロコルチゾンの短期投与で速やかに改善した. 患者への問診より副腎皮質機能低下症の原因としてAA服用下でのプレドニゾロンの怠薬が疑われた. AAを中止し, 次いでプレドニゾロンを漸減・中止した. その後血清コルチゾールは基準値を維持し低血圧症状なく血液透析は順調に行われている.

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© 2020 一般社団法人 日本透析医学会
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