2021 年 54 巻 6 号 p. 295-301
76歳,男性.冠動脈造影検査後に腎機能が増悪し末期腎不全に至り,3日前に左前腕に自己血管内シャントを造設した.呼吸苦を訴え当院救急外来受診,うっ血性心不全を認め入院となった.シャント未発達のため右内頸静脈にバスキュラーアクセスカテーテルを留置し,緊急で血液透析(HD)を開始した.第4病日の透析中に,全身性痙攣と数分間の意識消失がみられた.頭部MRAで脳底動脈の描出不良を認め,脳血管造影で右椎骨動脈閉塞と左椎骨動脈起始部の高度狭窄を認めた.椎骨脳底動脈循環不全(VBI)と診断し,左椎骨動脈起始部狭窄に対して経皮的血管形成術(PTA)を行い,ステントを留置したところ,脳底動脈の血流は改善し以後意識消失はみられなくなった.透析導入期にVBIを合併することは稀であり,文献的考察も含めて報告する.