2021 年 54 巻 8 号 p. 413-418
日本において新規透析導入患者と維持透析患者はともに増加傾向であり,高齢化の一途を辿っている.それに伴い,認知機能障害を有する透析患者もまた増加しており,腎代替療法を行う上で,安全に治療を遂行できるかどうかが課題となる.今回,重度の認知機能低下を有する慢性維持透析患者2例がシャント閉塞で来院した.2例とも短期記憶障害のため血液透析治療について認知しておらず,透析中の多動や抜針行為がみられていた.そのためシャントの再作製は行わず,肩甲骨上に出口部を作製してカフ型カテーテルを留置した.その後は大きな偶発症はなく透析を継続することができた.従来と異なる出口部である本手法は長期的な合併症のリスクや耐久性に今後の検討課題は有するものの,カテーテル挿入時の合併症は大きな遜色がないと考えられ,自己抜針のリスクが高い患者において安全に透析を行うためのバスキュラーアクセスの選択肢になりえると考えられた.