2022 年 55 巻 5 号 p. 335-340
症例は79歳女性.血液透析歴19年,関節リウマチに対して2年前からプレドニゾロン5 mg/日を内服している.下腹部痛を主訴に入院後発熱が続き,膿尿と腹・骨盤部単純CTで残尿を認めた.尿路感染症を疑い,メロペネムで加療を開始した.尿培養でEscherichia‒coli,血液培養でBacteroides thetaiotaomicronが検出,第3病日の造影CTで気泡を伴う膀胱周囲膿瘍を認めたため膀胱穿孔と診断した.手術は行わず,尿道カテーテルに加え,経皮的に膀胱周囲にドレーンを留置し,双方より持続ドレナージを開始した.穿刺液培養からPeptostreptococcus属が検出,クリンダマイシンを追加した.自覚症状・炎症反応は改善したが,膿瘍は残存しドレーン排液も遷延した.その後ドレナージ継続目的に転院した.本症例では,ステロイドの長期内服と慢性膀胱炎が膀胱穿孔の契機になった可能性が考えられた.また血液・尿培養での検出菌が異なったが,尿の嫌気性培養を行っておらず,病態を想定した適切な培養方法を実施する必要がある.