日本透析医学会雑誌
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症例報告
透析自己中断により尿毒症性心外膜炎による心タンポナーデをきたした1例
篠遠 朋子中野 雄太竹田 彩衣子河本 亮介松川 加代子
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2023 年 56 巻 5 号 p. 191-195

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抄録

症例は49歳男性,糖尿病性腎症による末期腎不全で維持血液透析を行っていた.2週間前から透析を自己中断し,呼吸困難を認め入院した.尿毒症を呈しており,緊急血液透析を行った.電解質異常や高窒素血症,呼吸困難は速やかに改善したが,心拡大が改善せず,血液透析で除水を継続した.入院7日目の透析後から血圧が低下し,心エコーの結果心タンポナーデと判断し,心囊穿刺を施行し血性心囊水を吸引した.2日間の心囊ドレナージを行い,抗凝固薬をメシル酸ナファモスタットに変更し透析を続け改善した.心外膜炎の原因となる感染症や悪性腫瘍などの所見はなく,尿毒症性心外膜炎と診断した.尿毒症性心外膜炎は透析医療の発達により稀な病態となっており維持透析患者が透析中断により発症した報告はまだない.治療は強化透析が基本であるが,本症例からは心タンポナーデをきたさないよう抗凝固薬の選択や除水量など慎重な対応が必要となることが示唆された.

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© 2023 一般社団法人 日本透析医学会
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