腹膜透析（PD）関連腹膜炎はPD離脱や死亡の原因となる重篤な合併症の一つである．80歳女性．腎硬化症による末期腎不全に対し70歳でPD導入．71歳でPD＋血液透析（HD）併用療法へ移行．80歳で初めてPD関連腹膜炎を発症し入院．抗菌薬加療で軽快するもPD排液培養からSerratia marcescensが検出．第7病日に腹痛が再燃し抗菌薬変更後も症状遷延．第10病日の腹部単純CTでair bubbleを伴う被包化腹水を認め緊急開腹手術を施行．術中所見では腸管の癒着や壁肥厚が確認された．術後はHDへ完全に移行し経過良好である．Serratia marcescensによるPD関連腹膜炎は重篤化しやすいだけでなく，中性化透析液使用下ではPD関連腹膜炎自体が被囊性腹膜硬化症を発症する誘因とも考えられている．PD関連腹膜炎の初回罹患でも急激に病状が悪化することがあり注意が必要である．
