【目的】透析患者の低亜鉛血症の実態を調査し,亜鉛補充療法の効果を検討する.【方法】透析患者の血清亜鉛値を測定し,低亜鉛血症の患者から亜鉛欠乏症状の有無を聴取した.希望する患者に亜鉛製剤を投与し,ESA抵抗性指数(ERI)および血清アルブミン(Alb)値の経時的変化と,亜鉛欠乏症状改善の有無について1年間観察研究を行った.【結果】223例中220例に低亜鉛血症を認めた.症状ありは220例中56例であった.症状あり47例,なし27例の計74例に亜鉛製剤を投与した.追跡調査の結果,ERI,Albに有意な変動を認めなかった.症状別の改善率は,口内炎100%,爪の変形75%,倦怠感50%,皮膚炎50%,食欲低下42%,味覚障害33%,脱毛症25%,勃起不全0%であった.【結語】透析患者の多くが低亜鉛血症であった.補充療法後ERI,Albに変化はなかったが,亜鉛欠乏症状は47例中23例(48.9%)で改善した.