人工透析研究会会誌
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糖尿病性腎症の透析療法導入時の合併症について
高橋 幸雄
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キーワード: 糖尿病, 導入期透析, 合併症
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1981 年 14 巻 2 号 p. 91-98

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抄録

毎年長期透析に導入される腎不全患者のうち, 糖尿病性腎症によるものは近年増加傾向がみられる. 透析導入時の肺浮腫の合併は, 糖尿病群 (DM群) 73.7%, 非糖尿病群 (非DM群) 15.0%, 嘔気嘔吐, 食欲不振はDM群30.6%, 非DM群95.0%, 胸水, 腹水はDM群50.0%, 非DM群12.3%であった. DM群では心不全, 非DM群では消化器症状が透析療法導入の直接のきっかけとなる場合が多い. 透析導入時の血清クレアチニン値は平均してDM群が非DM群より低値であり, 腎機能不全自体は前者の方がより軽いと考えられる. 末梢血管石灰沈着はDM群では透析導入時に56.7%にみられた. DM群の死亡原因で最も多いのは感染症で死亡26例中10例を占め, 10例中7例は透析1年以内に死亡した. 次いで心不全8例 (3例1年以内), 脳血管損傷3例 (2例1年以内) の順であった. 結核の合併も多く (5/51例中) 5例中4例は死の転帰をとった. 一般に予後不良群では高齢者が多く, 胸水, 低Na傾向, 食欲不振, 意識障害の合併が多い. しかし, 透析開始時の腎不全の重症度は予後と一致しない.
透析中の血糖の変動もみられるが循環血液量の減少程度は非DM群と有意差はない. PRAの透析中の反応はDM群で不良例が多く, アルドステロンも低い傾向がある. 血中ヒスタミン値はDM群で高く, 特に低血圧例で著しい. 透析で更に上昇する. 透析中の血中酢酸濃度の上昇程度は非DM群と差はない. 透析中の低血圧, 嘔吐はDM群で高率に合併するが, 原因として動脈硬化, 自律神経障害の他, レニンアンギオテンシン系の反応不良もあり透析中の体液変化に対する適応不良が考えられる. 透析中の症状に対してはREDY人工腎, 濾過型人工腎, 重炭酸透析液の使用が有効であった.

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