人工透析研究会会誌
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最新号
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  • 鈴木 好夫, 三浦 雅弘, 原 茂子, 葛原 敬八郎, 二瓶 宏, 三村 信英, 原 満
    1985 年 18 巻 3 号 p. 237-245
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院における10年以上透析の患者33名について超音波診断法により腎の嚢胞形成を観察し, またこれら対象のうち低血圧をしめす症例にangiotensin II (A II) 注入テストを行い嚢胞形成とR-A-A系との関連を考察した. 超音波診断法で観察した33名中31名 (94%) に透析患者の萎縮腎に多嚢胞性変化が認められ, 嚢胞形成様式をI, II, III, IV, V型に分類した. すなわち腎長径が8-9cmで大型嚢胞 (直径1-3cm) で置換されたI型, 腎長径は6cm以下で大型嚢胞で置換されたII型, 同III, IVは腎長径は6cm以下と小さく前者は直径1cm以下の嚢胞が数個存在し, 後者には超音波診断法上嚢胞がみつからないもの. V型は左右で別の型を示すもの. I-V型の別と臨床生化学データおよび原疾患との関連はない. 透析前PRAは大型の嚢胞をもつグループA (I型とII型の和) の方が小さい嚢胞および嚢胞の見つからないグループB (III型とIV型の和) に比べ統計的に有意に高い (P<0.01). PRAの透析前後比はグループAがBよりも高い. すなわちrenin分泌に与える透析の影響はグループAの方が大きい. 型別分類とPACの間に関係はなかった. 33例中7例にWHO基準の低血圧症が存在し, この7例すべてが高resin, 高aldosterone血症であった. 透析前PRAは低血圧症例と他の正常圧および高血圧症例との間に差はないが, PRAの透析前後比は低血圧症例の方が明らかに高い. よって透析のresin分泌に与える影響は低血圧症例において大きいと考えられた. A II注入テストによるcritical doseは7例の低血圧症例全例で, 正常とされる30ng/kg/min以下より高く, 10年以上透析例の低血圧症例でのPRA高値は血管の低反応性の代償機序と考えられた. 低血圧症の発生例数が大型嚢胞のグループAと小さい嚢胞および嚢胞の見つからないグループBで同率であったため嚢胞形成がrenin分泌に関与するという直接の証明はえられなかった.
  • 中村 義弘, 石橋 賢一, 小倉 三津雄, 末永 松彦, 有輪 六朗
    1985 年 18 巻 3 号 p. 247-251
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例1: 30歳, 男性. 基礎疾患は慢性糸球体腎炎. 昭和55年11月8日, CAPD開始. 順調に経過していたが, 昭和57年11月27日腹痛・排液混濁を認め入院. 入院時38.0℃の発熱, 腹部全体に圧痛と抵抗を認めた. 腹水は混濁し, 緑膿菌が検出された. 入院後, 自動腹膜灌流装置を用い, 感受性ある抗生薬による連続的洗浄を行ったが臨床的改善はえられず, 菌も消失しなかった. このためカテーテル抜去・再挿入に加え, 腹腔内膿瘍の存在を疑いGa-シンチ, 腹部超音波検査を試みたが膿瘍は確認できなかった. 以後も治療に反応せず敗血症状態となり, 12月23日死亡した. 剖検では, 肝横隔面に鶏卵大の膿瘍があり, 他の剖位にも多数の微小膿瘍が存在した. 直接死因は出血性細菌性心外膜炎による心タンポナーデと考えられた.
    症例2: 55歳, 男性. 基礎疾患は慢性糸球体腎炎で昭和57年2月よりCAPD開始. 昭和58年8月15日, 腹痛・排液混濁出現し入院. 入院時, 腹部圧痛著明, 排液は混濁し, 黄色ブドウ球菌を検出. 感受性ある抗生薬を用いて連続洗浄を開始したが改善なく, カテーテル抜去し, 再挿入を行った. Ga-シンチでは膿瘍を確認できなかった. その後も治療に抵抗していたが, 11月12日, クモ膜下出血を併発して死亡. 剖検では腹腔内肝屈曲部に膿瘍が確認された.
    CAPDに合併する腹膜炎は軽症であり, 重症・難治例は少ないとされているが, 治療に抵抗し重篤な経過をとるものも存在する. 我々の症例は2例とも腹腔内膿瘍を形成していたが, Ga-シンチ, 超音波検査では確認できなかった. 重症腹膜炎の合併においては腹腔内膿瘍の存在を常に念頭におき, 外科的腹膜炎に準じた, 観血的手段を含む, より積極的な対応も必要であると考えた.
  • 平林 俊明, 竹中 義昭, 西庵 良彦, 藤田 洋子, 吾妻 眞幸, 井原 元, 岩崎 徹, 五味川 修三, 依藤 良一, 稲垣 王子, 森 ...
    1985 年 18 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    最近, 長期間におよぶ慢性透析患者が増加するにしたがって腎性骨異栄養症の合併も増加しつつある. 中でも続発性副甲状腺機能亢進症が特に問題になり, それらの症例に対して副甲状腺亜全摘 (PTX) が施行されている. 我々も40症例に対してPTXを施行してきたが, これらの40症例に副甲状腺シンチグラフィーを試みた. 対象症例の年齢は24-63歳, 透析歴は4年4ヵ月-13年7ヵ月, 性別は男性15人女性25人であった. シンチグラフイーは201TIと放射性Iを用いたcomputer-assisted subtraction法によるものである. その結果, まずPTX直前の40回のシンチグラフィーでは, 検出率は部位や組織型には影響されず腺重量に比例することがわかった. そして, それは500mg以上では68%, 500mg未満では35%であった. また, false positiveの原因の1つとして甲状腺乳頭癌が確認された. 第2に術前に2回撮影した4症例中3例で検出した副甲状腺の数の増加が確認された. すなわち, シンチグラフィーにて病状の悪化が確認できた. 第3に, 15症例に対し術後計16回のシンチグラフィーを施行したが, 術直後ではすべて陰性となっていた. しかし, PTXで2腺を取り残した1症例では1年後に骨関節痛の再発をきたし, シンチグラフィーにて残存腺の腫大を確認した. 以上の結果より, 腎性副甲状腺機能亢進症において, 副甲状腺シンチグラフィーは部位診断やPTXの適応の決定に有用なだけでなく術後の経過観察にも有用であると考えられた.
  • 岡田 洋一, 牛山 喜久, 山田 和彦, 宮原 一徳, 翠川 栄治, 滝沢 茂美, 小野沢 浩志
    1985 年 18 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者における動脈硬化の程度を知る目的で, 慢性血液透析患者と健常者の総頸動脈の脈波速度 (PWV) を測定し, 次いで物理的硬化度指標についても比較検討した. その結果, PWV値は慢性血液透析患者群8.9±1.7m/sec, 健常者群6.9±1.5m/secとなり, 慢性血液透析患者群で明らかな高値を示した. さらに物理的硬化度指標である弾性率 (E), コンプライアンス (C), スティッフネス (β) においても, 慢性血液透析患者群と健常者群の間には有意差を認めた. 以上より, 慢性血液透析患者の動脈硬化は著しく促進していると思われた.
  • 三上 孝宏, 谷田部 哲夫, 永井 弘, 美留町 勉, 石山 卓良, 三沢 英雄, 上野 信一, 福留 裕一郎, 松井 則明
    1985 年 18 巻 3 号 p. 265-268
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Ca Free透析液とFOY減量による局所抗凝固法の有用性について検討した. Dialyzerは, 東レ社製B2-100, B2-200を使用した. 透析液組成は, Na139mEq/l, K2.5mEq/l, Mg1.5mEq/l, Cl103mEq/l, HCO3-20mEq/l, citrate 20mEq/l, glucose 200mg/dlとした. ionized Ca, total Ca, カオリン賦活全血凝固時間 (KCT) を測定した. citrate 20mEq/l添加することにより, 透析液Caの非イオン化率を極限まで高めると同時に, クエン酸が血中に移行し, Caの非イオン化率の上昇を認めた. このためにdialyzer出口で著明なionized Caの減少と, KCTの延長を認めた. また, 2%CaCl2を血中に1.2-1.4ml/minで補正することによりionized CaとKCTの正常化を認めた. 8症例に対し20回の血液透析を施行したが, Ca free透析だけでは, 動脈側チェンバー内の凝血は抑制されず, FOYを400mg/hr前後必要とした. しかし, 1例において無FOY透析が可能となった. 以上よりCa free透析とFOYの併用は, 局所抗凝固法として有用であった.
  • 小路 良, 中尾 俊之, 石田 裕一郎, 奈良 貞博, 石飛 幸三
    1985 年 18 巻 3 号 p. 269-272
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病由来の慢性血液透析患者は近年, 増加しているが, blood access troubleのために本治療の実施が困難となる症例も少なくない. そこで, 当院で慢性血液透析中の腎不全患者30例 (糖尿病群15例, 非糖尿病群15例) を対象にtroubleの頻度, 種類, 治療内容および病因解明の糸口として血液粘度, 血小板機能およびblood accessにおける循環動態の変化を検討し, 以下のごとき結果を得た.
    1) 糖尿病群での血栓性の血管閉塞の頻度は著しく高く, 19.4 patient monthに1回の再建手術を必要としたが, 非糖尿病群では113.5 patient monthに1回の頻度であった. 2) 血液粘度, 血小板機能は両群間に有意差は認められなかった. 3) 糖尿病群でのblood access部の循環動態の変化は著しく, 特に坐位では透析後のシャント血流量が著明に減衰するのが認められた.
    このblood access部での循環動態の変化が糖尿病群における高頻度のblood access troubleの主因と思われた.
  • 吉田 篤博, 及川 理, 新村 育夫, 両角 國男, 藤浪 隆夫, 横井 吉和, 吉野 正拡, 加藤 友義, 宮井 宏暢, 宗宮 信賢, 後 ...
    1985 年 18 巻 3 号 p. 273-281
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    非特異的な経過をとった溶血性尿毒症性症候群 (HUS) 2例を報告する.
    症例1は46歳男性. ネフローゼ症候群, 熱発にて入院, 腎生検にてHUSの診断を得た. 急激に腎不全に陥ったため早期に透析療法に導入, いったんは尿量が増加し透析を離脱した. 十二指腸潰瘍の手術後原因不明の腹腔内出血, 術後胃拡張のため著しい脱水に陥り再度透析療法に導入した. 本例は, HUS自体は透析への早期導入にて治療し得たが, その他の要因による脱水にて再度尿毒症に陥った症例である.
    症例2は13歳女性. 慢性腎炎にて入院. 腎生検にてfocal & segmenal glomerulonephritis (FSGN) with large cellular crescentの診断を得たためサイクロファスファマイド, ウロキナーゼ, ジピリダモールの併用による強力な治療を行った. 原因不明の発熱, 消化管出血により急激に腎機能が低下し, 透析療法に導入した. 臨床経過および検査結果よりHUSと診断した. 11回の透析にていったんは腎機能が回復したが, 徐々に血清クレアチニンが再上昇し, 1ヵ月後再度透析療法に導入した. 本例は腎生検, 臨床経過からみてFSGNに偶然HUSが合併したと思われる. 初回の急激な経過の急性腎不全はHUSに基づくもので, 2回目の比較的ゆるやかな経過の腎不全は, 臨床検査結果よりHUSによるものは否定的で, FSGNによるものと考えられる.
  • 冲永 陽一, 島野 チカ子, 中尾 一清, 大木 康雄, 松尾 武文
    1985 年 18 巻 3 号 p. 283-287
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析中にみられる血小板数の減少, 血小板第4因子の放出は透析による血小板の活性化を示唆する. 透析開始前にアスピリン1gを経口投与し, ヘパリンを抗凝固剤として定期的に重曹透析を受けている慢性腎不全患者25名を対象として, 透析中の血小板活性化がこのアスピリン投与で抑制されるのかどうかを血小板数, 平均血小板容積 (Baker 810), 血小板第4因子 (RIA法) を指標として検討した.
    ヘパリンの血小板に対する影響をみる目的で健常人にヘパリン5,000u 1回静注した. 静注後血小板数は15分, 30分に減少した後60分で増加するのがみられた. 一方血小板第4因子は血小板数の変化とは対照的に, 静注後15分で著明に増加した後減少した. しかしアスピリン前処置後ヘパリン静注群では, 静注後の血小板第4因子の上昇が有意に抑制された. また平均血小板容積には有意の変化はみられなかった.
    次に透析中の血小板活性化へのアスピリン併用効果をみた. 透析中の血小板数, 血小板第4因子の変化をみると開始15分で著明な血小板数の減少, 血小板第4因子の上昇がみられ, 透析中回路内での血小板活性化が強く起こっていることがわかった. しかしアスピリン前処置群でもこの血小板第4因子の上昇は全く抑制されなかった. また血小板活性化に伴い血小板回転の亢進が疑われたが, 透析中の平均血小板容積には有意の変化はみられなかった.
    以上より透析中の血小板活性化には血液-透析膜表面の接触による相互作用の他に, ヘパリン自体の血小板活性化作用にもよることがわかった. またアスピリン1gの投与はヘパリンによる血小板活性化は抑制し得たが, 透析中の活性化は全く抑制しなかった.
  • 合屋 忠信, 藤永 隆, 阿部 哲哉, 岩本 剛人, 佐々木 春彦, 黒木 健文, 内藤 正俊, 中村 定敏, 市丸 喜一郎
    1985 年 18 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    昭和58年11月から昭和59年6月の8ヵ月間に21名の慢性血液透析患者が, 手根管症侯群の治療を目的に済生会八幡病院を受診した. 患者は男10名女11名で, 平均年齢56.8歳 (36-77), 原疾患は全例原発性糸球体腎炎であった. 手根管症侯群の発症は両側に10名, 片側に11名と両側発症の率が高く, 透析導入から発症までの期間は107.2±34.1ヵ月で長期透析患者に多い. 自他覚所見にdistal motor latencyの測定を参考として診断したが, 罹患31手中疼痛は31手 (100%), 正中神経領域のしびれ31手 (100%), Phalen test陽性28手 (90.3%), 母指球筋の萎縮24手 (77.4%) にみられた. 測定した26患肢のdistal motor latencyは, 6例がabsent他の20例の平均は7.81±3.05msecで正常の約2倍に延長しており, また26例中25例が4.5msec以上であった. 内シャントの開存している上肢に22, 閉塞した上肢に6, 内シャント作成の無い上肢に3例の発症で, 内シャント作成は手根管症侯群の発症の一因となっている. しかし両側に発症する患者や長期透析者の発症が多いことから, 内シャント作成がもたらす血行動態の変化以外の病因の存在が推察される. 16例18手に手根管部の正中神経減圧術を行った. エスマルヒ駆血帯, tourniquet圧250mmHgを使用して無血下に手掌から手関節前面へのS字状切開で広い視野をとり横手根靱帯に到達し, 正中神経を圧迫絞扼する肥厚した同靱帯を2-4cm縦切し, 必要に応じて神経剥離術を追加した. 手術の数時間後より手の疼痛は全例消失した. 術後6-8週の所見を術前と比較すると, 手の疼痛夜間痛は全例消失, 二点識別覚には改善傾向がみられたが, 対象が進行した重症例が多いためか, 正中神経領域のしびれ, 母指球筋の萎縮, distal motor latencyの延長はいまだ改善されていなかった. 圧迫による正中神経の変性か不可逆的変化となる可能性もあり, 早期診断早期手術が好ましいと思われる.
  • 小田 正美, 柏原 昇, 池内 幸一, 山本 正, 仲山 実, 早川 正道, 大澤 炯
    1985 年 18 巻 3 号 p. 295-299
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Single needle dialysis (以下SNDと略す) は, 1960年代に開発され, 数多くの利点があるにもかかわらず, いまだ一般化しているとはいい難い. しかも本邦においては, SNDの透析効率に影響するパラメータについての研究が少ない. そこで我々はSNDの最適使用条件を得る目的で, シャント内流量, 体外循環流量, blood return time, blood return pressureの4項目について独自の実験系を用いて検討した.
    実験は以下の通りとした. すなわち尿素濃度100mg/dlを含む患者側シュミレーションプールと, 体外循環系であるSNDのセットを連結した状態で各パラメータを変化させ, 30分間循環後, 尿素除去率を測定しこの効率を比較することにより透析の至適条件を検討した.
    結果: 1. シャント内流量が100, 200, 300ml/minと増量するに伴い尿素除去率が有意に増加した. 2. シャント内流量が少ない場合 (200ml/min以下) は, 体外循環流量により除去率は影響を受けないのに対して, シャント内流量が十分 (300ml/min以上) な時は, 体外循環流量の増量に伴い除去率は増加した. 3. blood return timeは, シャント内流量のいかんにかかわらず除去率に影響を与えなかった. 4. blood return pressureの上昇は, 除去率の増加をもたらした. 5. シャント内流量が200ml/min以下の時は, double needle dialysis (DND) とSNDとの間に除去率に関して有意差を認めないが, シャント内流量を増量させるとDNDの除去率が有意に増加した.
  • 平山 順朗, 小山内 幸, 植松 和家, 鈴木 唯司, 舟生 富寿, 兼子 直
    1985 年 18 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    入院中の透析患者100例に対し精神科医による面接を行い, 患者のおかれた背景の相違による精神症状の出現状態の差を検討した. 透析期間では, 3ヵ月から1年が精神的には最も安定しており, その他の期間では半数以上の例で抑うつが認められ, 3ヵ月未満では焦燥, 怒りなどが, 1年以後には明るさやおおらかさの喪失が多く認められた. 年齢との関連では26-40歳の年齢層で抑うつ, 焦燥, 悲観, 怒り, あきらめ, 死の不安, 攻撃などが高頻度で認められた. 家族の問題で最も精神症状が強く出現するのは離婚例で抑うつ, 明るさやおおらかさの喪失, 悲観, 焦燥, 怒りや攻撃などが半数以上の例で認められた. 子供の状況との関連では, 子供が18歳未満の例でやはり精神症状が高頻度でみられた. 職業との関連ではサラリーマンが抑うつ, 焦燥, 怒りが, 無職例であきらめ, 悲観, 明るさやおおらかさの喪失の出現頻度が高かった. また, 合併症を有する場合には自殺念慮を含めてさまざまな精神症状が高頻度で認められた.
    矢田部-Gilford性格検査による性格類型では, B型で抑うつ, 悲観, 怒り, 攻撃, E型であきらめ, 自殺念慮, C型であきらめ, 死の不安が多く出現し, D型で最も安定した性格であった.
    面接後の対応は, 主として抗うつ剤, 精神安定剤 (minor tranquilizer) などの薬剤投与で行ったが, 患者に対して病状の再説明を必要としたり, 継続的な面接を行った症例も存した. 継続的な面接により精神症状の出現率はあきらかに減少していた.
  • 小野 慶治, 久末 洋子
    1985 年 18 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全症では血中ビタミンA (VA) が異常に高くなるが, 腎でのretinolからretinoic acidへの代謝障害とretinol binding protein (RBP) の増加による. この高VA血症の毒性について47名の安定した外来透析患者を対象に検討してみた.
    VA剤は投与されていないのに全例に高VA血を認め (平均418±24μg/dl), RBPもPAも著しい高値 (471±19μg/ml, 582±20μg/ml) を示した. VA値とHct値との間には高い負の相関関係 (r=-0.499) があり, 高VA血は貧血の促進因子の1つと考えられる. しかし, Hct値はRBP/VA率と正の高い相関関係 (r=0.613) があり, VAが十分にRBPと結合していれば細胞膜破壊というVAの毒性は軽くなるが, VAがlipoproteinと非特異的に結合した場合に毒性が強く現われると考えられる. このことはRBP/VA率がi-PTH, VLDLと高い負の相関関係 (r=-0.608, r=-0.324) を示すことからもうなずける.
    VA剤が投与されていないのに透析患者では高VA血症を来し, その毒性が認められるのでVAを含む総合ビタミン剤を安易に投与すべきではないかと考えられる.
  • 橋本 寛文, 筒井 信博, 今川 章夫
    1985 年 18 巻 3 号 p. 315-318
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血清マグネシウム (Mg) 濃度が高いと副甲状腺ホルモン (PTH) の分泌を抑制することより, 一般に透析液Mg濃度は1.5mEq/lと高く処方されている. しかし, 高Mg血症は末梢神経障害, 掻痒症などの原因ともなり, 可能であれば正常値に保つことが望ましい. 最近, 活性型ビタミンD 〔1α(OH)D3〕 製剤が使用され, 透析患者の低カルシウム (Ca) 血症は容易に補正されることから, 低Mg透析液 (Mg濃度0.5mEq/l) の有効性を検討した.
    対象は慢性血液透析患者40例で, 3ヵ月間低Mg透析液を使用し, 血清Mg, 血清Ca, 血清リン (P), 血清副甲状腺ホルモンc末端 (c-PTH) 濃度の変動について検討した. 血清Mg濃度は低Mg透析液使用により, 2.59±0.53mEq/lから2.00±0.33mEq/lへと有意に低下した (p<0.01). 血清Ca, 血清P濃度は低Mg透析液使用前後で有意差を認めなかった. しかし, 血清c-PTH濃度は低Mg透析液使用により, 2.06±1.16ng/mlから2.75±1.86ng/mlへと有意に上昇した (p<0.02). また, 低Mg透析液使用により, 血清Mg濃度と血清c-PTH濃度の間には負の相関が得られた.
    今後, 長期間の低Mg濃度透析液を使用するには, 血清Ca濃度の厳密な補正による血清c-PTH濃度の変動の観察, 他の方法によるPTH分泌抑制法の併用などについての検討が必要である.
  • 宍戸 寛治, 高橋 健, 秋沢 忠男, 北岡 建樹, 越川 昭三
    1985 年 18 巻 3 号 p. 319-322
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    急性肝炎の発症に伴い貧血の著明な改善を認めた慢性透析症例を経験したので, その臨床経過と貧血改善の機序について報告する.
    症例は36歳の女性, 昭和55年に慢性糸球体腎炎による慢性腎不全と診断され, 昭和57年5月血液透析導入, 以後週3回の外来血液透析を施行されていた. 透析導入前より高度貧血があり, タンパク同化ホルモンやタンパク透過性血液濾過器 (Duo-flux) を用いた濾過透析法 (HDF) などを試みたがいずれも著明な効果はみられず, Ht 15-18%程度の貧血がつづいていた.
    昭和58年11月の血液検査にてGOT 64, GPT 53KUとトランスアミナーゼ (Tr) の上昇がみられ, その後さらに上昇傾向を示したため, 精査・加療のため当科入院となった. 検査所見ではHBsAg(-), HBsAb(+), HA(IgM)Ab(-)であり, 他のウィルス抗体価の上昇もなく, 薬剤などの原因も考えにくく, さらに性器出血のため多量の輸血をした既往があることより輸血後のnonA, nonB hepatitisと診断した. Trは入院後も上昇したが, 発症後約4週をピーク (GOT 224, GPT 223KU) として低下傾向を示し, 8週後には正常化した. 一方, 貧血は肝炎発症とともに著明な改善を示し, 肝炎発症前のHt 16%からTr上昇のピークと一致してHt 30%まで上昇した. その後Trの正常化にやや遅れてHtは低下し, 肝炎発症後16週にはHt 21%まで低下した.
    本症例における貧血の改善は, 経過からみて今回の肝障害と因果関係を有することが推定される. 肝障害ピーク時の血清エリスロポエチン (Ep) および網状赤血球数は高値を示し, Tr正常化後のEpは測定感度以下であった. この結果から本症例における貧血改善の機序を考察すると, 肝障害によりhepatic erythropoietic factor (HEF) が産生され, これにより肝におけるEp産生が増加し, erythropoiesisが亢進したと考えられた. またHEF抑制に働くrenal inhibitory factorや骨髄抑制作用を持つuremic toxinsのprotein permeable HDFによる除去効果が寄与因子として作用した可能性も示唆された.
  • 原 茂子, 三浦 雅弘, 葛原 敬八郎, 鈴木 好夫, 二瓶 宏, 三村 信英
    1985 年 18 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病 (DM) 性腎症透析例の予後は, いまだ不良であり導入後1年以内の死亡例が多い. 私どもは, DM性腎症腎不全45症例で導入時の腎不全, 糖・脂質代謝異常, 導入時臨床症状等の病態と予後を対比検討した. さらに同-9症例で, HF (hemofiltration), HD (hemodialysis) による糖・脂質代謝に対する改善効果を対比した.
    導入時検査所見では, 生存期間1年未満群 (10例) は, 1年以上群 (35例) に比し有意にBUN高値 (145±48mg/dl) 低クレアチニン値 (10.9±2.8mg/dl) を示した. 空腹時血糖値は1年未満群で251±219mg/dl, 1年以上群で133±70mg/dlで, 前者で高値をみた. 脂質ではTG (triglyceride) が1年未満群239±78mg/dl, 1年以上群163±73mg/dlと前者で有意に高値であった. DM病型, 年齢, Ht, 血圧には差はなし. 脳血管, 心血管障害等のmacroangiopathyの合併は1年未満群でそれぞれ50%, 80%で, 1年以上群の17.1%, 31.4%に比し前者で有意に高頻度でみられた. 導入時主要症状では1年未満群で心不全, 肺浮腫が多くみられた. 死因では血管死が1年未満群で70%で1年以上群の22.2%に比し高頻度にみられた. 糖代謝障害, macroangiopathy, 高TG血症が導入後予後を左右する.
    同-9症例で行ったHF, HDによる糖代謝の改善の対比ではOral-GTTでの30分値のinsulinogenic indexには差がみられなかった. ΣIRI/ΣBS値ではHFで42.0±21.5μU/mg, HDで29.8±23.4μU/mgでHFで有意に高値でありinsulin分泌の増加がみられた. HF濾液中にはinsulin拮抗物質のsomatostatinが高濃度に検出された. 脂質代謝ではHFではTG 158±48mg/dl, HDでは190±82mg/dlでHFで改善傾向をみた. T-lipid, P-lipid, lipoprotein分画, HDL-cholesterolには差はみられなかった.
    糖・脂質代謝の改善の面からはHFはDM腎症に適切な浄化方法と考えられる.
  • 谷澤 隆邦, 谷 守正, 稲場 進, 馬瀬 大助, 松倉 裕喜, 原 正則, 樋口 晃, 岡田 敏夫, 富川 正樹, 永井 晃, 森田 猛, ...
    1985 年 18 巻 3 号 p. 331-338
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    乳児期発症の腎不全に対する治療法としてHDは十分な血流を有するブラッドアクセスの造設, 維持が困難なために一般にPD, CAPDが第1選択の治療法である.
    今回我々は生後5ヵ月時先天性発育不全腎により慢性腎不全に陥った乳児に対しPD, CAPDを施行したが難治性腹膜炎, カテーテル出口部感染により腹膜カテーテルを抜去せざるを得ず, 生後10ヵ月時外シャントによるHDを開始したがシャント閉塞, 静脈炎, 皮下トンネル感染を繰り返すため将来の内シャント用血管の温存, 内シャント成熟までの待機を目的に1歳時鎖骨下静脈へ成人用IVH用カテーテルをブラッドアクセスとして留置し, 試作したpressure to pressure limited double pump systemによるシングルニードルHDを開始した. 本法にて約1年1ヵ月間維持HDを施行し, 2歳2ヵ月時 (体重9.4kg) に母親をドナーとして腎移植に成功し, 移植後1年の現在まで生着中であり, 移植前に認めた合併症 (身体発育, 精神発達遅延) は著明に改善しつつある.
    以上の結果より, 乳児腎不全に対するHDにおいて鎖骨下静脈カテーテルはブラッドアクセスとして臨床的に有用であることを報告し, 乳児期発症腎不全の合併症に対して文献的考察を加え, 腎移植を前提とした適正透析管理の重要性を強調した.
  • 小崎 正巳, 畑谷 重人, 副島 昭典, 広瀬 康子, 宮本 克彦, 盧 建基, 大河内 康光, 清水 洋一, 久野木 忠, 辻 孝彦, 玉 ...
    1985 年 18 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    死体腎移植は生体腎移植と異なってしばしば緊急手術の形をとるため, 術前の血液透析も緊急透析となることが多く, また術後も急性尿細管壊死 (ATN) のため血液透析を必要とする場合が多い. 今回我々は死体腎移植39例を検討した結果, 死体腎移植患者の血液透析のcase pointは以下に述べることであった.
    1) 術前の血液透析は次の点に留意した. a) 凝固時間を測定し, ヘパリン量は可及的少なくした. b) 透析中にHt 30-35%を目標に輸血した. c) プレドニソロンは透析終了後または透析前2時間前に服用させた. d) 術後の看護の円滑化を図るため, 透析中に看護婦と患者の対話を十分に行った.
    2) 術後透析は次の点に留意した. a) 透析は移植後24時間以上経過してから施行することとし, 透析開始までの管理としては補液量は尿量+30ml/hr, 高K血症に対してはイオン交換樹脂, ブドウ糖インスリン療法で対処した. b) 術後早期は短時間頻回透析とし, 凝固時間を測定した. c) プレドニソロンは透析終了後または透析2時間前に服用させた. d) ATN中におこる急性拒絶反応を早期に発見するため, 99Tc-DTPAによる腎シンチスキャンを週2回施行した.
    3) 以上の点に留意した結果, 特に透析による合併症を認めず, 死体腎移植39例中34例 (87.2%) は透析より離脱し, 最長透析期間は42日であった.
  • 都築 一夫, 美濃和 茂, 伊東 重光, 稲垣 豊, 天野 泉
    1985 年 18 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    小児で緊急に血液浄化を施行する際のブラッドアクセスとして, 9症例に対し鎖骨下静脈へSeldinger法によりカテーテルを留置した. カテーテルはシリコン製で小児用サイズのものを主に使用した. この方法によりブラッドアクセスの機能は十分に得られ, 大きな副作用も認められなかった. 血液浄化を施行しない時は, カテーテルを携帯用マイクロ注入ポンプに接続し, 持続的にヘパリンを注入した. このため, カテーテル留置期間中もほとんどの症例では日常動作をほぼ支障なく行うことができた. この方法によれば中心静脈圧の測定も可能であり, 多少, 手技の習熟を要するが, 小児の緊急ブラッドアクセスとして頻用されてよい方法と考えている.
  • 山城 有機, 荘野 忠泰, 橋本 晋弛, 岩谷 逸平, 小林 登, 三木 章三, 後藤 武男, 藤田 嘉一, 岡 徹
    1985 年 18 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    今回, 著者らは腎不全状態における脂質代謝異常について血中Apo A1, A2, Eを中心に, その他の脂質分画の1回の血液透析前後における変動および合併症の有無による差異等について検索を試みた. Apo A1, A2は血液透析患者において低下が認められた. しかし, 1回の透析前後においてはApo A1, A2は, 合併症のない慢性腎不全群では, 透析前値 (n=15, Apo A1=92.8mg/dl, Apo A2=22.2mg/dl) に較べて透析後値 (Apo A1=118.2mg/dl, Apo A2=27.9mg/dl) では各々p<0.0005, p<0.01と有意な上昇を示した. 血液濃縮の影響を考慮し, 透析前後における血清総蛋白値で補正したが (Apo A1=101.5mg/dl, Apo A2=23.9mg/dl), なおApo A1, A2は上昇傾向を示した. しかし, 糖尿病および肝硬変合併例においては1回の透析後に上昇傾向は認められなかった. さらに透析前後におけるApo A1, A2とHDL-C, LCAT活性, 血清コレステロール結合能 (serum cholesterol binding reserve, 以下SCBRと略す) との相関について検索を試みたが, いずれも正の相関を認め, 特にApo A1, A2とHDL-Cとは, 各々r=0.833, r=0.641と有意であった. Apo Eは透析前後 (n=14, 前値=4.4mg/dl, 後値=4.1mg/dl) において有意な変動を示さなかったが, 透析後値の血清総蛋白値による補正値 (3.9mg/dl) では, p<0.01と有意な低下を示した. また, 血液透析患者におけるヘパリン負荷テストでは, Apo A1, A2, E, HDL-CおよびSCBRについては有意な変動は認められなかった. これらの結果より, 血液透析患者におけるApo A1, A2, HDL-C, SCBRおよびLCAT活性の1回の透析後における改善には透析により除去されうるuremic toxin等の関与が推定された.
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