人工透析研究会会誌
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透析患者の食事管理についての実態調査
辻 万寿美澤西 謙次斉藤 昇前田 圭禧河野 紀子川島 はるか福富 幸子山崎 淳子藤田 淑子田辺 幸子
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1982 年 15 巻 3 号 p. 297-304

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抄録
透析患者の社会復帰率を高める要因の1つに食事管理がある. 透析食を何年位でマスターするかを知るために, 透析患者139名を透析導入後1年未満A群15.8% 1-2年B群31.7% 3-4年C群22.3% 5-9年D群25.2% 10年以上E群6.4%の5群に分類し, その実態を比較検討した. 食事に対する心構えは透析歴を問わず十分にみうけられ, 水分や塩分摂取過剰の目安となる体重の増加に対してほぼ全員が注意し, 水分や塩分の制限には5年以上になると透析食をマスターしているためか苦痛にせず食事管理を行っていた. のどの渇きを強く意識し, それを我慢している率は3年以内で70%と高く, 3年以上では40%に低下し, 長期になる程口渇を意識せず日常生活の一部として水を飲みながら体重管理は十分に行っていた. 高K血症には果物・嗜好品の摂取制限や調理法の工夫により対処し, 食事摂取状況では非透析日に良好なのが目立ち, 食欲は透析歴の浅い者程透析により影響を受け, 長期になると透析は患者の生活のサイクルの一部になってきていると思われた. 家族は患者に協力的で, 家族全体が患者と同じ物を食べており, 患者本意の食生活が窺えた. 以上のことから, 食事の自己管理にA群では戸惑いながらも努力しているが, B・C群では透析にも慣れたためか怠満やルーズさが目立ち, D・E群では透析療法及び透析食を自己のものとしてきている傾向が明らかにみられた. そして, 長期透析患者の食事管理には, 問題の有無にかかわらず, 常に患者とのコミニケーションを保ち, 再々繰り返し指導することが重要であると思われた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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