抄録
高度に腎が荒廃した透析症例では従来腎シンチではすぐれた画像を得ることができなかったが, 今回, 我々は99mTc-DMSAを用いて透析症例の腎の鮮明な画像を作成することに成功した. 122例の原疾患の内訳は糸球体腎炎79例, 慢性腎盂腎炎15例, 糖尿病性腎症14例, 嚢胞腎10例, 腎結核4例である. 透析年数は6.4±4.8年であった. 週2-3回, 1回5-6時間透析で, 使用したdialyzerはhollow fiber型である. 99mTc-DMSA腎シンチグラムの作製は6mCiの99mTc-DMSAを透析終了後に静注し, 20-24時間後にNuclear Chicagoの低エネルギー用高分解能コリメータで背部より約3分間撮影した. また関心領域を設定して腎の99mTc-DMSAの摂取率をCDS 406 data analyzerにて計測した. 腎シンチグラムは122例の全例で鮮明な腎の画像が得られ, 原疾患別に特徴のあるシンチグラムが得られた. 腎シンチグラムから逆に原疾患を推定することが可能なほど各疾患に特徴ある画像が得られた. 99mTc-DMSAは特異的に腎の皮質に集積し皮質のfunctioning markerとしても一般に認められておりその腎の摂取率は分腎機能検査法として用いられている. 99mTc-DMSA腎シンチで腎の画像が鮮明でback groundが少ないほど, 残存腎機能が多いと考えられる. 実際に透析年数の長い症例ほどback groundが高く腎の画像が不鮮明になる傾向があった. 99mTc-DMSA腎シンチグラムは透析症例でも明瞭な腎の画像を示した. 原疾患別に特徴ある画像が得られた. 99mTc-DMSAの腎の画像はfunctionをも表現し, 透析症例でも99mTc-DMSA腎シンチをとることによって残存腎機能がわかり, 腎の荒廃の程度を明確に定量的に把握できた. 透析症例の腎の画像診断には99mTc-DMSA腎シンチが大変有用である.