抄録
今回, 私どもは10年以上透析生存症例 (自験61例, 道内アンケート集計305例) を分析し, 現時点での合併症の全体像を明らかにした上で, 頻度の高い貧血と腎性骨症について検討した. この305名の約73%は40歳未満に透析の開始された若年導入者であり, 原疾患の約84%は慢性糸球体腎炎であった. Htは27.5±6.2% (平均±SD, n=305) であり, 20%以下が33名, 10.8%に存在した. これら症例の貧血は大部分, 既往から継続しており, 各種の補助療法等に反応せず難治性であった. 自験61名中Ht 20%以下の症例は4名であったが, 腎CTから概算された腎容積は10年以上透析者としてはその平均を大きく下回り, 嚢胞形成度, 血漿EPO値も低値であった. この点が, これら症例における高度貧血の決定的因子である可能性がある.
腎性骨症を主としてc-PTH (65-84h-PTH, INC; 46-84h-PTH; 栄研) の変動から検討した. 透析期間を1年未満, 1-5年, 5-10年, 10年以上の4群に分けてc-PTHをみると, 経年的増加が統計学的に認められた. 10年以上透析生存者についてみるとc-PTHの変動は3つの型に分類しえた.
自験61例の10年以上生存者の昭和60年7月末現在のc-PTHをみると10ng/ml以上が7例11.5%であり, PTx 6名を除外すると55例中7例, 12.7%となった. これらは自覚症状に個人差はあるが各種画像診断上, ほとんど全例に腫大した上皮小体が確認されてPTxの適応例と考えられた. PTHからみると, c-PTH>10ng/ml, N-PTH>150pg/ml, intact PTH>300pg/mlが二次性上皮小体機能亢進症と推定された.
c-PTHはN-PTH (1-34h, Nichols) およびintact PTH (1-84h, INC) と高い正の相関を示したが, 時に三者の解離することもあって, 今後の検討が必要である.