日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者に対するrecombinant human erythropoietin (r-HuEPO) 治療の循環動態に及ぼす影響
栗原 怜加藤 仁志河辺 満彦森島 明米島 秀夫秋葉 隆葉山 修陽
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1989 年 22 巻 7 号 p. 733-736

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抄録

Recombinant human erythropoietin (r-HuEPO) 投与による貧血の改善が, 血液透析患者の心血行動態にいかなる影響を及ぼすかを検討した.
対象・方法: 週3回の維持透析を施行しているヘマトクリット値 (Ht) 23%以下の腎性貧血患者6例 (平均年齢51.7±3.7歳, 平均透析期間60.7±22.9か月, 5例は降圧剤の投与を受けている) に, r-HuEPO (中外製薬 (株) 製, 治験略号: EPOCH) を1回1,500単位あるいは3,000単位 (23.1-59.4単位/kg・体重), 毎透析終了直前に透析血液回路の静脈側より投与した. 投与前と投与開始8-18週 (平均11.5週) 後に, Swan-Ganz thermodilution catheterを用いた右心カテーテル法により, 心血行動態を観察した.
結果: Htは投与前の17.4±0.8%から投与後26.9±1.4%へと有意の改善 (P<0.001) を認めた. 全血血液粘度は2.50±0.07cpから2.95±0.05cpへと有意に上昇 (P<0.001) した. 体重, 心胸比, 心拍数および平均動脈圧には投与前後で有意の変化を認めなかった. 一方, 右心力テーテル法にて測定した心拍出係数は, 投与前の6.09±0.21l/min/m2の高心拍出量状態から, 投与後の5.06±0.24l/min/m2へと有意の低下 (P<0.05) を認めた. 1回拍出係数は, 82.5±5.0ml/m2から69.5±2.8ml/m2へと低下傾向 (P<0.1) を示し, 心拍数には変化を認めなかったことから, この心係数の改善は1回拍出量の低下によるものであると推測された.
結論: r-HuEPO投与による貧血の改善は, 血液透析患者の高心拍出量状態を改善し, 心血行動態に好影響をもたらすと考えられる.

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