日本透析療法学会雑誌
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長期血液透析患者における破壊性脊椎関節症destructive spondylarthropathyの臨床的検討
丸山 弘樹本間 則行下条 文武小林 直之今井 久弥植木 一弥恵 京仔小田 瑞枝荒川 正昭
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1989 年 22 巻 7 号 p. 741-748

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抄録

1984年Kuntzらは, 1) 椎間腔の狭小化, 2) 椎体の骨侵食や骨嚢胞, 3) 骨棘が無いことなどの脊椎X線所見に特徴づけられる破壊性脊椎関節症destructive spondylarthropathy (DSA) が, 長期血液透析患者に出現することを報告した. そして, 椎間板にhydroxyapatite crystalsを認めたことから, hydroxyapatite crystal depositionがこの症候群の成因に関与していると考えた. また, Sebertらは, DSAが抗β2-microglobulin抗体と反応するamyloidに関連していることを示した. さらに, Alcalayらは, 透析導入に至らない慢性腎不全患者に出現したDSAを報告し, 病因として二次性副甲状腺機能亢進症が重要であると報告した. しかし, DSAの病態生理については, なお一定の見解がない.
私達は, 長期血液透析患者181例を対象としてDSAの臨床的検討を行った. 透析歴は0.2-18.0年, 平均7.6年であった. 8症例 (4.4%) にDSAの典型的所見が認められた. 8症例の透析歴は7.7-15.2年, 平均11.2年で, 年齢は43-68歳, 平均52.2歳であった. 病変は, C5-C6 (4例), C4-C5 (3例), C4-C5. C5-C6 (1例) にみられた. 局所の疹痛は, 2例にのみ認められ, 他の6例 (75%) には認められなかった. 手根骨透亮像は6例 (75%) に認められた. 3例 (37.5%) に, 手根管症候群の手術歴があった. 3例とも, 手屈筋腱滑膜に抗β2-microglobulin抗体陽性amyloidの沈着が認められた. 3例 (37.5%) に, 二次性副甲状腺機能亢進症がみられた. 感染を示唆する臨床および検査所見を示す症例はなかった.
以上の結果から, 長期血液透析患者には, C4-C5, C5-C6に特徴的なX線像を示すDSAを合併する者が存在するが, 多くは無症状であるため, 頸椎X線検査を定期的に行う必要があると考えられた.

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