抄録
血液透析患者における動脈硬化症の進展に対するビタミンE (VE) の効果について, 臨床的に検討した.
動脈硬化の程度は, 腹部大動脈の石灰化の程度を腹部CTスキャンで得られた石灰化指数 (ACI) にて評価した.
対象は透析患者34名で, VE服用 (200-600mg/日) の有無で服用群17名, 未服用群17名に分けて検討した. 両群は性, 年齢, 透析期間をはじめ, Ca拮抗薬, 炭酸カルシウム, アルミゲル, およびカルチトニンの併用についてマッチしていた. また血清カルシウム, リンおよびPTHレベルについても一致していた. 観察開始時のACIは服用群: 15.6±29.2, 未服用群18.1±24.6と有意差を認めなかった.
以上両群について, ACIを3年に亘り観察したところ, 未服用群は, 1年, 2年, 3年でそれぞれ, 7.8±3.2, 12.2±8.4, 16.5±8.8と経年的な増加が認められた. 一方服用群も, 2.2±2.9, 3.6±4.1, 6.1±5.0と増加が認められたが, 未服用群に比べ各観察時において有意に減少していた.
血圧, 除水量, および心胸比に関しては両群間で有意な変動を認めなかった.
ACIは動脈硬化の1指標であることより, 透析患者にVEを投与することによって動脈硬化症の進展が抑制されたことを示唆する成績と考えられる.