日本透析療法学会雑誌
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慢性血液透析患者における各種腫瘍マーカー測定値の検討
大平 整爾阿部 憲司長山 誠今 忠正石神 達三山内 茂樹田島 邦好
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1991 年 24 巻 4 号 p. 475-483

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抄録

慢性透析患者には悪性腫瘍が好発するとされている. 治療成績を向上させるための診断手段, 治療効果・再発の判定などに各種の腫瘍マーカー (TM) は有用である. しかし, 慢性透析患者の各種TMについては明確な基準値が確立しておらず判定に困難を覚えることがある. 今回, 私共はこの点を解明することにした. 3施設の187例を透析歴から男女各5群に分類した. この中から14例を悪性腫瘍の既往確定診断や新たな診断等のために除外した.
TMとしてelastase-1, CEA (S), CA-50 (TR-FIA), AFP, IAP, SCC, CA19-9, CA-125, PAP, PA, ST-439, BFP, SLX, TPAの14種を選択し週初回の血液透析の直前に採血したサンプルで測定した.
健常人100-130名の測定結果から得られたそれぞれのTM基準値と透析例のTM値とを比較した. その結果, 今回測定したTMは以下の3群に分類された. 1. 健常人と同一の基準値をとるもの; AFP, CA-125, PAP, PA, ST-439, 2. 比較的高値をとるもの; EL-1, CA-50, CA19-9, BFP, SLX, CEA (S), 3. 明らかに高値をとるもの; IAP, SCC, TPA. 従って, 2, 3に該当するTMについてはparametric法による検討を行い次のように透析患者の基準値を試算した (括弧内は健常人の基準値): EL-1 131-707ng/dl (100-400), CA-50 71 U/ml (35), CA19-9 76 U/ml (37), BFP 166ng/ml (75), SLX 45 U/ml (30), CEA (S) 6.9ng/ml (2.5), IAP 1,068μg/ml (500), SCC 6.5ng/ml (1.5), TPA 447 U/l (110).
男女差はCA19-9にのみp<0.05で認められた (女>男). 透析歴2年未満と10年以上の2群の比較で後者に増加を認めたTMはPAPとTPAであった (p<0.05). 各種TM値とBUN, SCrとの間には有意な相関を認め得なかった. 透析患者のTM値がある種のもので高値を示す事実については, 該当物質の産生・代謝・排泄が関連するが, これについても若干の考察を加えた.

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