日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
長期透析患者の破壊性脊椎関節症の検討
野村 幸範佐藤 直之森下 薫西川 英樹塚本 雄介大久保 充人
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 24 巻 8 号 p. 1079-1085

詳細
抄録

長期透析者の骨関節合併症の1つとして主として頸椎に特有のX線像を示す破壊性脊椎関節症destructive spondyl-arthropathy (DSA) は透析アミロイドーシスの1部分症として最近注目されている合併症である. 我々もDSAの1手術例を経験し, 当施設の透析患者129名について頸椎X線検査を施行しこれを検討した. 我々はDSAは単純X線学的に椎間狭小を初発症状として進行すると考え, 19症例 (14.7%) について, X線所見上その進行度により3群に分類した. すなわち, 軽症群Stage 1として, 椎間狭小のみ, Stage 2はこれに骨硬化像が加わり, Stage 3ではさらに, 骨嚢腫, 骨破壊が生ずるものとした. DSAの障害椎間はC5/6 (48.0%) を中心とした下部頸椎に多く認められ, Stage 1: 11例 (8.5%), Stage 2: 6例 (4.7%), Stage 3: 2例 (1.6%) であった. 血清HS-PTH, AI, β2-MGなど血清学的検査では特異的な所見は認めなかった. 透析歴で10年以上で頸椎に何らの異常を認めない長期透析患者Stage 0群は透析歴180±30月と最長であるが, Stage 2群, Stage 3群の8例とStage 1群の11例の比較では前者 (重症例) の125±47 (45-185) 月は, 後者 (軽症例) の78±46 (3-147) 月に比べ有意に透析歴の長期化を認めた. 年齢はStage 0群では46.8±7.9歳, Stage 1群では48.5±9.0 (36-66) 歳, Stage 2群, 3群では54.6±7.1 (43-63) 歳で, 重症例で有意に高齢化を示した, DSAの発症には加齢による骨関節の退行性変性 (age-related bone loss) も関与していると推測された. MRIは, 我々のX線分類の進行過程と一致し, DSAの進行度と手術の適応を決定するために有用であった. 手術適応決定には, 症状と障害椎間との関連性と共に, 長期透析に伴う各種合併症を十分に配慮する必要がある. 予後についても全身性アミロイドーシスの厳重な経過観察と再発の予防に努めるべきである.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top