日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
鉄過剰状態を有する透析患者へのエリスロポエチン (rEPO) 投与
相対的鉄欠乏の出現
栗原 怜竹内 正至鳴海 福星米島 秀夫秋葉 隆丸茂 文昭河辺 満彦大薗 英一
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 24 巻 8 号 p. 1125-1129

詳細
抄録

鉄過剰状態を有する血液透析患者へのrEPO投与が体内鉄動態に及ぼす影響を観察し, 併せて鉄補充療法の是非についても検討した. 対象はrEPO投与を受けている維持透析患者40名中, 投与前血清フェリチン値が750ng/ml (正常上限の3倍) 以上の高値を示し, かつ投与後6か月以上観察できた男7, 女3の計10症例 (平均年齢46.9±7.1歳, 平均透析期間101±40.4か月) である. ヘマトクリット (Ht) 値, 血清鉄 (Fe), 不飽和鉄結合能 (UIBC), 血清鉄/総鉄結合能 (TIBC)×100% (transferrin saturation, TFS), 血清フェリチン値を平均22.8±10.9か月間観察した. rEPOは, 1回1,500あるいは3,000単位を3回/週で開始し, Ht値で25-30%に達した時点で1回1,500単位を1-3回/週に適宜減量し維持量とした.
結果: 1. Ht値は投与前の17.1±2.7%から3か月後には26.0±3.9%へと上昇し, 以後同様の値を維持した. 2. 血清フェリチン値が高く体内貯蔵鉄は十分にあると考えられる症例で, 一時的にせよFe値の低下 (60μg/dl以下), UIBC値の上昇 (60μg/dl以上), TFS値の低下 (25%以下) を示した症例が60% (6/10) に認められた. 3. このうちの3症例に鉄剤補充 (iv) を行うとrEPOの増量なしで造血反応の改善が認められたことから, これらの症例は相対的鉄欠乏 (relative iron deficiency) 状態にあったと考えられた. 4. 血清フェリチン値はrEPO投与前の平均1,357±481ng/mlから投与30か月後の平均367±172ng/mlへと約70%低下した.
結論: 体内鉄過剰状態を有しながら, rEPO投与により相対的鉄欠乏状態を呈する症例が存在する. 血清フェリチン値のみにとらわれず, Fe値, UIBC値ならびにTFS値から総合的に鉄動態を評価する必要がある. また, このような例に対しては, 高価なrEPOの有効使用という観点から, 鉄過剰状態を悪化させないよう注意しながら, 鉄剤の一時的投与も考慮すべきと思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top