日本透析療法学会雑誌
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透析患者好中球の化学発光動態の変化について
甲田 豊西 慎一丸山 資郎宮崎 滋湯浅 保子酒井 信治鈴木 正司高橋 幸雄平沢 由平
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1991 年 24 巻 8 号 p. 1137-1142

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抄録

好中球や単球の放出する活性酸素は, 感染防御に重要な役割を果たす一方, 過剰となれば組織障害を生ずる. 私たちは, 透析患者の分離好中球と全血の両者により, 各種刺激剤を加えた後, 活性酸素産生状態を示すルミノール依存性化学発光 (CL) を検査した. その結果, 刺激剤の種類や透析歴などにより, 活性酸素産生動態に変化がみられたので報告する.
対象は, 活動性の感染症, 悪性腫瘍, 慢性関節リウマチ, 糖尿病性腎症などを除いた維持透析療法を受けている慢性腎不全患者である. 分離好中球は21名 (平均透析期間13.1年), 全血は57名 (同11.3年) で検索した. Phorbormyristate acetate (PMA), A23187, opsonized zymosan (OZ) などの異なる機序の刺激剤により, 化学発光の動態は異なっていた. 受容体を介さないPMA刺激では, 全血, 分離好中球とも透析歴が長くなると最大発光強度は低下した. また, 最大発光までの立ち上がりが急速となっていた. これは長期透析例の細菌感染症の機序を示唆し, 透析患者の好中球は, 細胞内に刺激が伝達されれば活性化しやすい状況にあることが伺えた. 受容体を介するOZ刺激では, 全血を用いた測定系において最大発光までの時間が遅れ, 血清による影響か受容体に抑制があることが伺えた. また, PMAとOZ刺激については全血と分離好中球の間に, 相関が認められた.
好中球の化学発光は刺激剤の種類, 全血か分離好中球かにより結果は異なる. 血清の影響などを含むより自然な状態で好中球の活性酸素産生動態を検索することができる全血発光検査は有用である.

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© 社団法人 日本透析医学会
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