抄録
毎年会員の協力によって実施される透析の現況調査のうち, 糖尿病性腎症透析患者について, 1990年12月末の現況と, 患者個人登録が開始された1983年以来の患者数・導入者数・死亡者数・死因・生存率などの経年的な検討を試みた. 1990年度分調査の対象は, 日本透析療法学会準会員および1990年11月末日において知り得た非会員透析施設に調査を依頼し, このうち慢性透析を実施していない旨の回答を得た施設を除外して, 2,157施設を統計調査対象施設とした. 回収率は最終的には2,157施設中2,106施設より回答があり, 97.6%となった.
結果はまず患者数では, 糖尿病性腎症透析患者は依然として直線的に増加し, 年度末患者に占める割合は14.9%, 導入患考に至っては26.2%と, いずれも慢性糸球体腎炎に次いで第2位である.
性差では1.5:1の比で男性が多く, 導入時の平均年齢は60.2歳と今年度調査にて初めて60歳を突破した.
死因は, 他疾患と同様に心不全・脳血管障害・感染症が3大死因である. しかし心不全は減少傾向にあり, 悪性腫瘍・心筋梗塞・突然死が増加傾向にあった.
生存率も他疾患に比し必ずしも良好とはいえないが, 年齢階級別にみた生存率は60歳以上で明らかに低下しており, 糖尿病性腎症透析患者の高齢化と最も関係していると考える.
年齢因子を除き死因より考察すれば, 虚血性冠疾患・高血圧・動脈硬化・伝導障害などの循環器合併症と, 易感染性・栄養障害などいずれも透析導入以前よりの合併症が解決されずに, あるいはむしろ増幅して生存率を低下せしめている状況と考える. 今後より詳細な分析をし, 生存率の改善に貢献する資料を提供したい.