抄録
当院の血液透析患者57名のうち無作為に選出した30名 (男16名, 女14名, 平均年齢56.1歳, 平均透析期間6.7年) についてC100-3抗体, HCV第二世代抗体 (HCVコア領域, 非構造領域両者に対する抗体) およびHCV RNAを測定し, 輸血量, 肝障害パターン, 透析期間との比較検討を行った. C100-3抗体はELISAテスト (オルソ社), 第二世代抗体はHCV EIA II (ダイナボット社) で測定し, HCV RNAはHCVゲノムの5'非翻訳領域をプライマーとするnested PCRで検出した. C100-3抗体は10例 (33%), 第二世代抗体は18例 (60%), HCV RNAは16例 (53%) で陽性であり, 第二世代抗体が最も高い陽性率を示した. HCV RNA陰性14例のうち, C100-3抗体または第二世代抗体が陽性なのは3例のみであった. 各陽性率はそれぞれ輸血量の多いもの, 肝障害が持続しているもの, 透析年数の長いもので高い傾向があった. RNA陽性16例における第二世代抗体は全例でカットオフ値の90倍以上と高力価であった. このうちC100-3抗体陽性の8例 (50%) では現在も肝障害が持続しており, C100-3抗体陰性の8例 (50%) では, 過去に見られたトランスアミナーゼの上昇が現在は消失している者が多かった. この事から透析患者には無症候性HCVキャリアが多数存在し, これらがトランスアミナーゼの測定やC100-3抗体では見逃される可能性が示唆された. 当院の透析患者全体でのC100-3抗体陽性率は23%であったが, もし上記の割合でHCVキャリアが存在するものと仮定すると, 当院の透析患者全体の約1/3がHCVキャリアである可能性がある. 第二世代抗体はPCRの結果とよく一致し, かつ測定が簡便である事から, 透析患者のHCV感染のスクリーニングや無症候性キャリアのチェックに適した実用的な方法と考えられた.