抄録
C型肝炎を合併した49歳の長期血液透析 (HD) 患者にインターフェロン (IFN) βによる治療を行い, その際IFN βの薬物動態, 透析性について検討した. C型肝炎の診断はHCV抗体陽性, HCV-RNA (PCR法) 陽性, および肝生検にて慢性活動性肝炎の像が得られたことによった. IFN βはHD日はHD直前に300万単位を15分間で静脈内に投与した. はじめの2週間は連日投与とし, 以後は週3回HD前に6週間, 5週間の休薬後さらに4週間, 計7,200万単位投与した. IFN βのクリアランス値はHD施行時はほとんど0であり, 濾液中にもほとんど検出されなかった. またHD日と非HD日とにIFN βの血中濃度の変化に差はみられず, 投与4時間で血中よりほぼ消失した. IFN βの半減期はHD施行時約10.3分, 非HD日約13.2分で腎機能健常者では約6.5分であった. 長期投与による血中残存は認められなかった. また血中HCV-RNAは投与1か月後より陰性化した. 主な副作用は一過性の発熱のほか白血球減少がありG-CSFの併用を行った. 治療終了5か月後の現在もHCV-RNA陰性であることから本症例ではIFN βが有効であったと考えられた. 以上IFN βはHDによる除去はほとんどみられず, また血中蓄積もなく, C型肝炎を合併したHD患者に対して有効であったと考えられる1例を報告した.