日本透析医学会雑誌
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移植腎慢性拒絶後における透析再導入患者の予後と合併症
安村 忠樹大坂 芳夫中井 一郎吉村 了勇鈴木 茂敏大森 吉弘岡 隆宏
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1994 年 27 巻 2 号 p. 89-94

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抄録

腎移植後, 慢性拒絶反応などにより移植腎機能が廃絶した患者では, 腎不全状態に加え長期にわたる免疫抑制療法により, 一般透析導入患者と異なった合併症を発症する. そこで, 腎移植後機能廃絶した89例を対象として, 透析再導入後の合併症, 予後について検討した. 透析再導入後の累積生存率は, 1年92%, 5年83%, 10年77%であった. 現在まで21例が死亡したが, このうち6例が再導入後3か月目までの死亡であり, 原因は肺感染症, 消化管出血, 穿孔などで, 再透析直前まで行われていた免疫抑制療法が重大な要因となった. また1年目以降は心不全, 脳出血, 消化管穿孔など透析の合併症で死亡した. 透析再導入後は免疫抑制剤の投与量を減量するが, この経過中に急性拒絶反応様の症状が出現し15例に移植腎摘出が行われた.
一方, 移植腎を温存している50例のうち, 24例48%は免疫抑制療法から完全に離脱しており, 18例 (36%) はプレドニゾロン5mg/日の投与が行われている. 移植腎温存例では移植腎からのある程度の尿の排泄があり, 摘出例では週3回の透析が必要であるのに対し, 温存例では再導入後4年までは週2回透析例が認められた. また摘出例と温存例との生存率を比較すると, 温存例では3か月以内の死亡があるため, 2年目まで有意差を認めるが, これ以降では両群に差は認められなかった. このように移植腎拒絶後は早期から免疫抑制剤の減量を行い, 免疫抑制療法に基づく合併症を予防することが予後を改善する上で重要であり, これ以降は移植腎摘出の有無に拘わらず, 一般の透析患者と比べ予後には差は認めなかった.

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