日本透析医学会雑誌
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メシル酸ナファモスタットにより高カリウム血症をきたした2症例
大河原 晋斎藤 幹郎矢作 友保田部井 薫浅野 泰
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1995 年 28 巻 9 号 p. 1269-1272

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抄録

蛋白分解酵素阻害薬, メシル酸ナファモスタット (nafamostat mesilate; NM) により高カリウム (K) 血症をきたした2症例を経験したので報告する. 症例1は, 51歳, 女性. 原発性アミロイドーシスより腎不全をきたし, 平成元年5月より血液透析導入となった. 同年9月19日より慢性膵炎急性増悪のためNM 150mg/日を投与したところ, 血清K値が4-5mEq/lから, 翌朝に7.0mEq/l, 翌々日に7.2mEq/lまで上昇した. その後膵炎症状が軽快したため, 21日後にNMを中止したところ, 22日には血清K値の低下を認め, その後, 以前と同様の推移に復した. 症例2は, 76歳, 男性. 平成5年12月10日, 解離性大動脈瘤 (Stanford A, 早期血栓閉塞型) を発症し, 降圧療法にて保存的治療を施行中であったが, 12月19日肺炎を併発したため, イミペネム/シラスタチンナトリウム2g/日投与を開始したところ, 急激な腎機能悪化を認め, 同剤を中止するとともに血中からの薬剤除去を目的に12月22日より持続血液濾過透析を開始した. 抗凝固剤としてはNM 30mg/時を使用した. その後, 徐々に血清Kの上昇を認め補液からのK投与を中止し, さらに透析液流量を増加させたが, 血清K値はさらに上昇した. 12月23日持続血液濾過透析を中止し, NM投与も中止したところ, 翌日より血清Kの低下を認め, その後も上昇を認めることはなかった. 症例1, 2ともNM投与が血清K上昇の原因と思われたが, 症例1は無尿状態で, 血清Kの上昇にNM, およびその代謝産物の腎でのK排泄に対する作用の関与はないと思われた. 症例2では, NM投与中のKバランスの検討では体内よりおよそ110mEqものKが透析により除去されていた. 以上より2症例とも高K血症の原因としてNM, およびその代謝産物の腎外性K調節系への関与が強く疑われた.

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