日本透析医学会雑誌
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透析患者に発生する破壊性脊椎関節症の背景因子に関する検討
成瀬 友彦渡邊 有三伊藤 晃山崎 親雄稲熊 大城福澤 良彦
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1998 年 31 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

血液透析患者に発生する破壊性脊椎関節症 (DSA) の危険因子を明らかにする目的で, 我々は314名の患者において断面的調査を行った. DSAは40例 (12.7%) の患者に認められ, 頸椎病変が最も多く第4-6頸椎の病変で全体の80%を占めた. DSAを有する患者群と有さない患者群との比較では, DSAを有する患者群の方が高年齢で, 透析期間も有意に長かった (61.2±1.5vs55.6±0.7歳, P=0.005, 119±10vs91±4か月, P=0.007). しかし, 透析導入後6年以内の短期例でもDSAを9例に認めた. DSA発症に関与すると推測される諸因子との単因子相関では, 骨嚢胞の存在と手根管症候群の合併例でDSAの発症頻度が有意に高かった (それぞれX2=35.2, P<0.0001, X2=12.4, P=0.0004). 一方, 二次性副甲状腺機能亢進症や副甲状腺機能低下症, 骨粗鬆症は有意な寄与因子ではなかった. 以上より, 長期透析患者, 高齢者, そして透析アミロイドーシスの合併がある患者ほどDSAの頻度が高まることが単因子相関で確認された. 一方, 多変量解析では骨嚢胞所見の存在と現在年齢のみが有意と採用され, 手根管症候群や透析期間は有意な危険因子ではなかった. この結果はDSAが短期透析患者でも起こりうることを反映しているものと思われる. 短期透析患者でDSAを合併する者の平均年齢は64.6±3.9歳と高齢である. DSAは決して長期透析患者のみの合併症ではなく, 高齢透析患者が増加する一方の現状を鑑みれば, 一人一人の患者に対する詳細なX線学的な検査が重大な合併症予防の見地から重要と考えられる.

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