抄録
CRIT-LINEを用いた新たな水分貯留の指標を考案し, その妥当性を検討するため透析前の下大静脈径と比較検討した. 外来維持透析患者40名について透析中の除水率を変えずに血液透析を行い, CRIT-LINEより得られたグラフを直線回帰して透析中の循環血液量減少率を求めた. 体重当たりの除水率と循環血液量減少率の関係から, 総除水量に対する血管内除水量の比率を求め, 血管内除水量/総除水量=1/4以上, 1/4-1/5, 1/5-1/7, 1/7以下の4群に分類し水分貯留の程度の指標とした. その妥当性を検討するために透析前の下大静脈径係数 (下大静脈径/体表面積) と比較した. 結果は, 透析前の下大静脈径係数が小さいものほど, 言い換えれば水分貯留の少ないものほど, 総除水量に対する血管内除水量の比率が高くなり, 血管内除水量/総除水量=1/3以上: 脱水傾向が強く血圧低下をきたし易い, 1/3-1/5: 適正除水, 1/5-1/7: 水分過剰傾向, 1/7以下: 肺水腫の危険性がある傾向があった. 以上の方法により, 総除水量に対する血管内除水量の比率を透析毎の経過として解析することで, 水分貯留の増減傾向が判別され過剰水分を除いた真の体重変化を察知することができ, より科学的なdry weightの設定に有用である.