日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
水道水に含まれるエンドトキシン, ベータグルカン, ペプチドグリカンのハイフラックス膜通過の評価
阿部 薫椎名 充星野 正信山本 明広芝本 隆秋葉 隆
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 31 巻 9 号 p. 1273-1278

詳細
抄録

目的: 水道水中に含まれるエンドトキシン (ET), ベータグルカン (BG), ペプチドグリカン (PG) を指標としてハイフラックス膜 (HFM) 通過の有無を検討した.
方法: HFM透析器はセルローストリアセテート膜 (FBF, ニプロ), ポリメチルメタクリレート膜 (BKF, 東レ), ポリスルホン膜 (PSN, 川澄およびAPS, 旭メディカル) で対照に再生セルロース膜 (RCM, 旭メディカル) を用いた. 血液側, 透析液側ともに注射用蒸留水で洗浄後0.05%ETフリーアルブミン溶液にて再循環した. 循環5分後に開始時測定を行い透析液側に水道水を接続しendotoxin specific test (ES), high sensitive test (HS), silkworm larvae plasma test (SLP) を用い経時的にET, BG, PGを120分まで測定した. 測定は和光純薬ES, HS, SLPキットおよびMT-358を用いた. ES活性はETのみ特異的に反応し, HS活性はET, BGに, SLP活性はBG, PGに反応することから分別測定した.
結果: ES活性は全膜とも血液側の検出限界以下と透析液側の活性減少を認めた. HS活性は全膜とも血液側の上昇と透析液側の低下を認めた. RCMの血液側で活性は最も高値を示し, 次いでPSN, BKF, FBF, APSの順であった. SLP活性は全膜とも血液側および透析液側の上昇を認め, RCMの血液側で最も高値を示し, 次いで, PSN, FBF, APS, BKFの順であった.
結語: ES活性からETはHFMおよびRCMの膜通過は確認できず, 透析液側の膜面に吸着を認めた. HS活性からBGはHFMを通過する可能性が考えられ, RCMでは膜素材由来のBGの溶出が確認された. SLP活性物質の血液側上昇はBGおよびPGの膜通過のみでは説明できず, 何らかの遊離活性化物質または産生機序の存在が推測された. また, 水道水にSLP活性反応が示されることより, 水道水を用いた実験系の有用性が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top