日本透析医学会雑誌
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慢性血液透析治療下の患者に対する入院リハビリテーションの現況
松下 啓田中 寿美長友 さやか石井 當男
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2002 年 35 巻 12 号 p. 1503-1507

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抄録
慢性血液透析患者におけるリハビリテーション (以下, リハビリ) の現況および効果につき, 糖尿病の有無で検討した. 対象は1996年4月から2000年11月までの期間, 入院下においてリハビリを施行した血液透析患者47例で, 糖尿病群19例 (平均年齢66.6歳) と非糖尿病群28例 (平均年齢67.5歳) とに分けた. リハビリを開始するまでの透析期間は, 糖尿病群では50.2±40.1 (mean±SD) 日, 非糖尿病群では97.3±94.4日であり, 糖尿病群で有意に短かった (p<0.05). リハビリの適応となった最も多い疾患は, 脳梗塞および脳出血であった. 入院期間および実質訓練日数は, 糖尿病群で, それぞれ, 106.7±117.8日および74.3±96.6日であり, 非糖尿病群で, それぞれ, 90.1±62.9日および64.6±64.7日であった. 糖尿病群は非糖尿病群に比べ, 入院期間, 実質訓練日数はともに長い傾向にあった. 日常活動能力の指標であるBarthel index (100点満点) はリハビリ前後において2群間で有意差はなく, 2群ともにリハビリにより有意に改善した (糖尿病群: p<0.04, 非糖尿病群: p<0.002). リハビリ前のBarthel indexと入院期間あるいは実質訓練日数との間には有意の負の相関関係が認められた (糖尿病群: r=-0.463, 非糖尿病群: r=-0.490). リハビリ前のBarthel index 59点以下 (18例) と60点以上 (29例) に分けると, 入院期間は, それぞれ, 144.9±100.2日および66.9±65.9日であり, 実質訓練日数は, それぞれ, 120.5±91.6日および36.2±46.5日であった. Barthel index 60点以上の群の方が59点以下の群に比べ, 入院期間, 実質訓練日数ともに有意に短かった (p<0.0005). 以上より, 血液透析患者に対する入院リハビリの効果は, 糖尿病群と非糖尿病群との間で有意な差はなかった. 糖尿病のある透析患者においても, 適応があれば積極的にリハビリ治療を行うべきであろう.
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