抄録
骨や電解質代謝の病態においては, 総カルシウムに比し, イオン化カルシウムが, より生理的な関連性が強いことが知られている. しかし, イオン化カルシウムを測定できる検査機器は限られるため, 従来から, 1973年にPayneが報告した式を用いて, 実測血清カルシウム値と血清アルブミン濃度から補正カルシウム値を計算し, イオン化カルシウムを簡便に求めてきた. この補正方法について, 補正項 (Alb-4) の係数の検討や, 透析後の血清カルシウム値との相関を高めるため, pHとAlbを含めた重回帰分析法の検討が報告されている. 今回われわれは, 補正式そのものの必要性を検討するため, 血液透析患者86例についてイオン化カルシウムを実測し, 実測血清カルシウム値や補正カルシウム値と比較, 検討した. その結果, 透析前値における実測イオン化カルシウム値との相関係数 (r) は, 補正カルシウム値がr=0.861, 実測血清カルシウム値はr=0.896であった. 同様に透析後は, 補正カルシウム値がr=0.637, 実測血清カルシウム値はr=0.585であった. このように, 血液透析患者の透析前値において, 実測イオン化カルシウム値との相関係数は, 補正カルシウム値と実測血清カルシウム値が同程度の値を示した. さらに, 1/ (実測血清カルシウム値とイオン化カルシウム値の回帰直線の係数) の値が, 従来から使用されているイオン化カルシウム値 (mmol/L) は血清カルシウム値 (mg/dL) の約8分の1であるという値と一致した. したがって, 血液透析患者における透析前値では, 実測血清カルシウム値からイオン化カルシウム値を判断することが可能であり, 補正カルシウム値を求める必要性はないと考える.