抄録
【目的】 東レ社は従来市販されていたBSダイアライザーに比べ中空糸有効長の長尺化, ハウジング細径化, 中空糸充填率を増加したBS-ULを開発した. 中空糸長尺化と充填率増加が低分子蛋白除去および, 内部濾過にどのような影響を与えるか基礎, 臨床の両面から評価した. 【方法】 基礎・臨床評価で検討したダイアライザーは, 長尺化したBS-1.6UL (BSL), 従来型のBS-1.6U (BSU), PS-1.6UW (PSW) である. 1. 基礎評価: 溶質除去能評価を擬似血液に透析患者の廃血漿を用いて行った. 項目はクリアランス (Qd: 500mL/min, および2,000mL/min), ふるい係数である. 内部濾過量の検討はBSUを使用したpost-dilution (post) HDFとBSLを使用したHDでのクリアランスから評価した. 低分子蛋白・脂質の吸着能を家族性高脂血症患者の廃血漿を用い, 再循環により評価した. 2. 臨床評価: 血液透析患者 (男2名, 女4名) 6名にBSL, BSU, PSWをそれぞれ3回使用した. 評価項目は溶質除去率と白血球数, 血小板数, C3aの経時変化, ダイアライザーの血液側, 透析液側圧力損失である. 【結果】 1: 小分子量物質の除去性能は各ダイアライザーに差はなかった. 低分子蛋白の除去性能はBSLがBSU, PSWに比べ高値を示した. BSLのβ2MGクリアランス (HD時) はBSUのpostHDFで置換量2.86Lに相当するクリアランスを示した. 低分子蛋白・脂質の吸着量は各ダイアライザーに差はなかった. 2: 溶質除去能は基礎評価と同様の結果であった. 圧力損失は血液側でBSU<PSW<BSLの順に高値を, 透析液側はBSLでBSU, PSWに比べ高値を示した. 【結語】 中空糸長尺化, 充填率増加へ改良したBSLは低分子蛋白除去性能が優れ, その理由は内部濾過が促進された結果である.