日本透析医学会雑誌
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維持透析患者における腹部大動脈石灰化係数および脈波速度に関する検討
久保 昌志多胡 紀一郎
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2003 年 36 巻 9 号 p. 1431-1436

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抄録

【目的】 血液透析を受けている慢性腎不全患者を対象として, 同時期に計測した腹部大動脈石灰化係数 (ACI) と脈波速度 (PWV) を比較し, また, さまざまな動脈硬化症関連因子との関連性について解析を試みた. 【方法】 当施設において維持血液透析治療を施行している患者122例 (男性79例, 女性43例, 平均年齢57.8±13.6歳, 平均透析期間98.8±81.0か月) を対象とした. 腹部CTスキャンの所見によりACIを測定し, また, 透析治療前に上腕動脈-足首動脈間のPWVを測定した. そして, それぞれに対して, 年齢, 性別, 喫煙状況, body mass index, 透析期間, 動脈硬化性疾患の既往, 血液検査成績 (intact PTH, Ca, Pi, 総コレステロール), 血圧, 糖尿病の有無との関連性について検討を行った. 【結果】 ACIとPWVは統計学的に有意な正の相関関係にあった (r=0.466, p<0.001). また, ACIとPWVはそれぞれ年齢と有意な正の相関関係を示した (ACI: r=0.428, p<0.001, PWV: r=0.610, p<0.0001). 糖尿病患者は非糖尿病患者と比較してACIのみに関して有意に高値であった (糖尿病患者: 30.2±19.5%, 非糖尿病患者: 21.0±23.4%, p<0.05). 血圧に関しては収縮期血圧とPWVとの間で有意な正の相関を認めた (r=0.397, p<0.001). 【結論】 動脈硬化症に対する形態学的な評価手段であるACIと機能的な評価手段であるPWVは統計学的に有意な正の相関関係にあった. 今回の解析では年齢, 糖尿病, 収縮期血圧が動脈硬化症の関連因子として示唆された.

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