日本透析医学会雑誌
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持続的血液透析濾過が多臓器不全の改善に有効であった急性胃拡張の1例
小池 勤山田 邦博絹野 裕之平出 聡上野 均泉野 潔供田 文宏井上 博高田 正信
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2004 年 37 巻 5 号 p. 1339-1343

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抄録

症例は20歳, 男性. 2000年4月に38℃台の発熱, 腹部膨隆と嘔吐が出現し近医に入院した. 腹部X線およびCTで胃内に大量の空気と残渣の貯留を認めた. 胃管の挿入により多量の空気と黒色の胃内容物が排出されたが, その後ショック状態に陥り乏尿も生じ当院へ転院した. 入院時検査成績では貧血の進行と多臓器障害を認めた. 上部消化管内視鏡検査では, 胃全体の粘膜壊死を認め, 胃・十二指腸に器質的狭窄がなかったことから急性胃拡張に伴う胃粘膜壊死と診断した. 胃からの出血が遷延したため胃全摘術も考慮したが, 全身状態が著しく不良であったので保存的治療を施行した. 腎不全に対しては, PMMA膜hemofilterを用いた持続的血液透析濾過 (CHDF) を開始し, 循環動態は次第に安定し腎不全は回復した. また, 輸血, 高カロリー輸液, アルブミンおよびH2ブロッカーなどを投与し, 胃粘膜病変は改善した. 出血や穿孔を伴う重症の急性胃拡張例は外科的手術の適応となるが, 本症例のように保存的治療のみで治癒しえた症例は極めてまれと考えられた. 本例では, 特にCHDFが腎不全の是正のみならず, 血中のcytokine除去を介して病態の改善に寄与したものと考えられた.

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