日本透析医学会雑誌
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血液透析 (HD) 患者の血中心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) 値によるドライウェイト (DW) の判断基準に関する検討
石井 恵理子安藤 康宏山本 尚史小藤田 敬介浅野 泰草野 英二
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2004 年 37 巻 6 号 p. 1417-1422

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抄録

血中ANPはDWの指標として用いられているが, DW設定のための体液量の定量的な基準値, 特にhypovolemiaに関しては明確ではない. 今回われわれは, HD患者のANPとDWの関係について検討し, DWの適否判断のためのANP基準値を設定した. 主に心胸比によってDWが設定されている維持HD患者58名のHD後でのANP値 (RIA固相法) を測定し (n=110), その時点のDWの適否を自他覚所見に基づいてDW過小群・適正群・過大群の3群に分類し, ANPとの関係を検討した. その結果, 3群間においてHD後ANP値は有意差を認めた (DW過小群: 35.5±6.0pg/mL, DW適正群: 57.4±4.4pg/mL, DW過大群: 137.8±22.8pg/mL). 適正DW群の透析後ANP値の10-90パーセンタイルは25-100pg/mLに分布しており, ANP値が25-100pg/mLの間にあれば, DWが適正である確率は69.4%であった. さらに適正群のANP中央値付近 (40-60pg/mL) であれば, DWが適正である確率は95.8%と極めて高くなった. また, ANP 25pg/mL以下, あるいは100pg/mL以上ではそのDWが適正である可能性は低く, 25pg/mL以下では57.1%の症例でDWは過小であり, 100pg/mL以上では70.8%の症例で過大であった. ANPをDWの指標とする場合, 40-60pg/mLを至適DW目標とし, 25pg/mL以下, 100pg/mLはそれぞれDW過小・過大の可能性を考えるべきと思われた.

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