日本透析医学会雑誌
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正常および腎不全ラットにおけるsevelamer hydrochloride投与後の血清リンおよび副甲状腺ホルモン値の時間変化
時間制限給餌下での検討
永野 伸郎宮田 そのえ阿部 めぐみ脇田 幸子小林 奈巳青野 友紀子和田 倫斉
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2004 年 37 巻 6 号 p. 1423-1429

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抄録

Sevelamer hydrochloride (sevelamer) は, カルシウム (Ca) を含まないポリマー性のリン (P) 吸着剤であり, 透析患者における高P血症治療剤として用いられている. 腎不全患者において, 食直前に服用したsevelamerが, 1日の内でいかなる薬力学的作用をもたらすかを外挿する目的で試験を実施した. 正常および5/6部分腎摘ラットを正常食あるいは高P食による時間制限給餌 (9:30-11:00) に馴化させた. その後, sevelamerを混餌した正常食あるいは高P食を時間制限給餌し, 血清P, Caおよび副甲状腺ホルモン (PTH) 値の時間的推移を検討した. その結果, 腎機能が正常な状態での食餌性のP負荷は, その後の血清P, Ca×PおよびPTH値の上昇をもたらしたが, sevelamerの併用により, これらは完全に抑制された. 二次性副甲状腺機能亢進症を呈する腎不全ラットにおいて, 食餌性のP負荷は, その後の血清P値の上昇程度を顕著に増輻させたが, 血清PTH値のさらなる上昇には繋がらなかった. Sevelamerの併用により, 高P食摂取後に生じる高P血症および血清Ca×P値の上昇は長時間にわたり抑制されたことより, 臨床における異所性石灰化の進展抑制に有用と推察された. また, 腎機能の程度にかかわらず, 高P食群の摂餌前の血清PTH値は高値を示したことより, 高P食摂取後に生じる高P血症は, たとえ-過性であっても連日の繰り返しにより副甲状腺機能を元進させ得ることが示唆された.

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