日本透析医学会雑誌
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保存的治療の期間と血液透析導入時の臨床像からみた糖尿病性腎症の検討
中司 敦子神崎 資子岩田 康義高木 章乃夫池田 弘福島 正樹
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2005 年 38 巻 8 号 p. 1385-1390

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抄録

糖尿病性腎症の保存期腎不全の期間と透析導入時の臨床像, 腎不全進行に関与した因子について検討した. 糖尿病性腎症による末期腎不全で当院で血液透析導入となった58症例 (男性36例, 女性22例, 平均年齢62.8±10.6歳) について, 血清クレアチニン値2.0mg/dLの時点から透析導入までの期間が2年未満のA群と2年以上のB群とに分け, 臨床的に比較検討した. A群はB群に比し約10歳平均年齢が低く, 有意に尿蛋白量が多く, 血清アルブミン値が低く, 腎サイズが保たれていた. 一方, B群は脳梗塞の合併率が高かった. また, 重回帰分析で, 保存期腎不全の期間は, 高年齢と腎長径が小さいことと正の相関を示した. これらよりA群は細小血管症である糖尿病性糸球体硬化症が, また, B群では大血管症である腎硬化症が主に関与した病態と考えられた. 個々の症例における保存期腎不全の期間は, これら2つの病態の関与の程度の違いを反映しているものと考えられる. 高齢者の糖尿病透析患者が増加している近年, 腎硬化症が糖尿病性腎症の進行に大きな影響を与えている.

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