日本透析医学会雑誌
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血液透析患者における安静時エネルギー代謝量の測定
角田 政隆千葉 尚市大宮 志寿加奥田 絵美中川 幸恵安田 卓二秦 温信
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2006 年 39 巻 5 号 p. 1133-1141

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抄録

維持透析患者は栄養不足であるといわれることが多い. 血液透析を施行することも生体で異化作用を亢進させると考えられている. そこで, 血液透析自体がエネルギー代謝に関与していることを調べるため, 血液透析患者23名を対象として, 間接エネルギー測定法を用いて安静時エネルギー代謝量 (REE; Resting Energy Expenditure) と, 呼吸商 (RQ; Respiratory Quotient) を調べた. 計測は, 週初め (中2日) とその2日後 (中1日) の2回, 透析前, 透析中 (1時間おき), 透析終了前, および終了後に施行した. 年齢, 性別, BMIをマッチさせた健常者を対照とした. REE・RQとも中1日と2日の間に有意差はなかった. 患者群の開始時のREEは対照群と比較して有意に低かった. しかし, 透析経過中のREEの変化に有意差はなかった. また, 開始時のRQは患者群は対照群よりも有意に高かった. RQは透析中に減少していった. さらに, 患者を過去1年間に, 十分栄養が摂取できたためにドライウェイトが上昇した群 (A群), また栄養が不十分で減少した群 (B群) に分類して検討したところ, 開始時のREEはA群がB群にくらべて有意に高く, 開始時のRQはA群が有意に低かった. また, 透析中のRQはB群が減少する割合は大きかった. 両群間でREEに差がみられることを考えると, REEは採血だけでは困難な, 透析患者の栄養状態の指標になる可能性がある. また, 摂取した食事の栄養素の割合が患者群では健常者群と異なっているため, 健常者にくらべて透析患者のRQが低い可能性がある. REE・RQをみることで効果的な栄養指導を行ったり, 透析中のエネルギー投与 (IDPN; Intradialytic parenteral nutrition) の指標となりうると考えられた.

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