日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
留置型血液透析カテーテル先端右房内の巨大血栓を開心術で除去した2例
崔 啓子清水 英樹西 隆博三瀬 直文日野 春秋三浦 純男木川 幾太郎宮入 剛多川 斉杉本 徳一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 39 巻 6 号 p. 1203-1209

詳細
抄録

留置型血液透析カテーテル (パームキャス®: 以下留置型カテーテル) 先端周囲の右房内に血栓を形成し, 開心術で除去した2例を報告する. 症例1: 66歳, 女性. 慢性糸球体腎炎 (CGN) による慢性腎不全 (ESRD) のため64歳時血液透析 (HD) 導入. アクセス困難から留置型カテーテルを使用したが, 約1か月後に左下腿蜂窩織炎からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin resistant Staphylococcus Aureus, MRSA) 菌血症となり留置型カテーテル先端で右房内血栓を形成した. 肺梗塞も合併していたため, 速やかに開胸し留置型カテーテルおよび血栓除去術施行. 術後経過は良好で約1か月後に連続携行式腹膜透析 (CAPD) へ移行した. 症例2: 58歳, 女性. CGNによるESRDのため3年前にHD導入. アクセス困難から留置型カテーテルを使用したが, 脱血不可能となり神経性食思不振症に対する中心静脈栄養ラインとして使用していた. 約10か月後に偶然の経胸壁心エコー検査で, 右房内巨大血栓があり右室に落ち込む所見も認めた. 開胸し留置型カテーテルと血栓を除去した. 症例1は悪性リンパ腫深部静脈血栓症, 副腎不全のためステロイド剤内服などが, 症例2では摂食障害のため慢性的に脱水状態であったことが, 発症と増悪の危険因子と考えられた. 2例とも予後は良好であった. 結語: 留置型カテーテル先端に血栓を形成した2症例を経験した. 経食道または経胸壁の心エコー図で確定診断し, 開心術による除去が奏功した. まれな合併症であるが, 留置型カテーテル使用困難が認められた時には鑑別するべき重要な合併症である.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事
feedback
Top