認知症治療研究会会誌
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Print ISSN : 2189-2806
BPSD に対する少量薬物治療 ~老健での終わりなき戦い~
大平 政人
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2022 年 9 巻 1 号 p. 26-

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抄録
2013 年3 月から2021 年11 月までの約9 年間で経験した認知症でBPSD の為少量薬物治療 を要した140 例を対象とした.疾患の内訳として,アルツハイマー型認知症(以下AD)90 例,脳 血管性認知症(以下VD)29 例,レビー小体型認知症(以下DLB)12 例,前頭側頭葉変性症(以下 ピック病)9 例であった.入所当日に認知機能検査を行い,必要に応じ認知症短期集中リハビリテー ションの指示を行った. 治療はKono Method を基本とし,症例に応じて個別に対応をした.治療に先だち患者家族に疾患 の概要と少量薬物治療の説明を行い,理解に努めた.結果としては,改善がみられたもの82%,過 鎮静を来したもの7.1%,悪化したもの7.2%,その他のものが3.7% であった.過鎮静を来したものに 対しては薬剤の中止を行うと同時に輸液などを行いADL の改善に努めた.少量薬物治療の鍵は治療 の7 合目を目指すことであり,それにはユマニチュードに準じた丁寧なケアと適切な医療が重要であ る.従来の介護老人保健施設(以下老健)の役割から一歩踏み込んだ少量薬物治療を行うことで,患 者・家族からより信頼される施設となり得ると信じている.そして全国各地の老健でもパラダイムシ フトによる発想の転換を行い,この治療法が広まっていくことを願っている.
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© 2022 認知症治療研究会
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