電子端末の教育現場への普及によって,児童は多くの情報に触れ,学ぶことが可能になった。一方で情報量の増加のため,重要な情報を優先的に処理し,記憶することが必要になった。そこで本研究では,電子端末におけるこの記憶負荷の問題を解決するために,読みにくい書体で表された情報が記憶されやすい現象(非流暢性効果)を利用し,教科書書体と組み合わせた場合に記憶を向上させる書体を検討した。具体的には,教科書書体とは異なる形態を持ち,読みにくい書体で表された単語の記憶が向上するかを検討した。その結果,書体の読みやすさは記憶成績に影響を及ぼさず,非流暢性効果は頑健な現象ではないことが示された。このことは,電子端末における記憶負荷の問題の解決には非流暢性効果は利用できないことを示している。