抄録
【背景】心室細動(VF),心室頻拍に対するアミオダロン(AMD)静注薬は2007年より本邦でも使用可能になった.しかし,Brugada症候群におけるVFに対するAMD静注薬の有効性に一定の見解は得られていない.【目的】Brugada症候群におけるVFの誘発性に対しAMD静注薬の及ぼす影響を,電気生理学的検査(EPS)を用いて検討した.【対象・方法】無投薬もしくはピルジカイニド負荷試験にてtype 1Brugada型心電図を呈し,心事故の危険性を層別化するために行ったEPSによりVFが誘発された連続7例を対象とした.全例男性で,失神歴を有する1例を除き無症候性であった.これらに対してAMD静注薬を投与し,投与前後での電気生理学的特徴,VFの誘発性を比較した.【結果】AMD静注射後にEPSを施行したところ,AH間隔(投与前97.9±12.2msec,投与後118.6±16.1msec p値=0.0008)とHV間隔(投与前47.1±7.6msec,投与後53.7±8.9msec p値=0.012)の延長を認めた.7例中5例は,無投薬下でVF誘発のために右室心尖部もしくは右室流出路の3連期外刺激を要したが,AMD静注薬投与後はより簡易な2連期外刺激でVFが誘発された.【結論】Brugada症候群におけるVFの誘発性はAMD静注薬では抑制されなかった.