抄録
心磁図の信号強度は磁場源と磁気センサ間の距離に依存するため,通常の正面記録法では,心臓後面側の微小な信号の記録が十分になされない可能性がある.そこで,心臓の正面と背面の両方から心磁記録を行い,脚ブロックの心室内伝導遅延の時空間解析を行った.完全左脚ブロック(CLBBB)例と完全右脚ブロック(CRBBB)例で,正面と背面の心磁波形からそれぞれの心室脱分極信号の消失時点を決定し,時間差(正面-背面)を計測した.その結果,CLBBB例では時間差-14 ± 8msecと背面で長く信号が記録されたのに対し,CRBBB例では時間差14 ± 4msecと逆を呈した.電流アロー図解析により決定した最終興奮部位は,CLBBB例では背面の左側中央領域,CRBBB例では正面の右側中央から下方領域であり,それぞれ左室後壁と右室自由壁と推察された.以上,正面と背面の心磁解析は脚ブロックの心室内伝導遅延時間の定量化と遅延興奮部位の同定に有用であるとわかった.