抄録
心不全患者における心臓突然死は心不全死と並ぶ最大の死因であり,生命予後の改善を図るうえでその発生を未然に防ぐことはきわめて重要といえる.植込み型除細動器(ICD)の1次予防効果を確認した大規模臨床試験はすべて欧米で行われたもので,これらの結果をそのまま我が国に外挿することには問題がある.特に心筋梗塞患者の予後は欧米に比べて良好といわれ,適切なリスク評価が望まれる.また,心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy : CRT)は心臓の非同期的収縮と左心機能低下を有する患者において,QOLのみならず生命予後も改善させることが証明された.CRTにICDの機能を搭載したCRT-Dは心不全死と心臓突然死を抑制し,より一層生命予後の改善に貢献することが期待されている.最近の大規模臨床試験は,より軽症な心不全患者にもCRT-Dが有効であることを証明しており,同治療法の適応拡大は今後の潮流といえる.CRT-Dを用いることの最大の問題は,不適切あるいは不必要なショックの送出である.今後はショックを可能な限り抑制するアルゴリズム,設定の工夫が要求されるであろう.