2016 年 36 巻 1 号 p. 49-54
心房細動(AF)の開始時には交感神経・副交感神経活動亢進が先行することが観察される.内因性自律神経の神経節(ganglionated plexi : GP)は,肺静脈(PV)と心房組織に神経線維を出す.GPの過剰活動は神経線維末端から過量な神経伝達物質の放出を促し,結果としてPV,心房に異所性興奮,リエントリーを引き起こす.実験的にはGPの過活動がAF発作を誘発し,持続させるとする「内因性自律神経過活動説」が提唱されている.発作性AFの発生源として非PVのMarshall靭帯や上大静脈にも神経線維が豊富に分布している.理論的には,GPアブレーションは心臓自律神経系の過剰活動性とそれに起因する発作性AFの発生を抑制するが,臨床成績は一定しない.その原因の一つは,治療を要する過常興奮GPの拡がりについて,知見が少ないためである.AF治療におけるGPアブレーションの意義は,GPアブレーション法を含め,さらなる臨床研究が必要と考えられる.