2020 年 40 巻 2 号 p. 107-113
Gタンパク質結合型内向き整流性K+(GIRK)チャネルは,種々の生理的役割を担うイオンチャネルである.例えば,脳においてはGIRK1とGIRK2のヘテロ複合体が存在し,神経細胞の興奮性を制御しており,心房においてはGIRK1とGIRK4のヘテロ複合体が存在し,心拍の調節に寄与している.われわれは,小分子ライブラリーのスクリーニングにより,抗寄生虫薬として知られるIvermectinがGIRKチャネルを活性化すること,さらに,抗ヒスタミン薬として知られるTerfenadineがGIRKチャネルを抑制することを新たに見出した.本研究では,アフリカツメガエル卵母細胞にGタンパク質結合型受容体の共発現なしに種々のGIRKチャネルを発現させ,二電極膜電位固定法により電気生理学的解析を行い,IvermectinがGIRK2サブユニットに活性化作用を示し,TerfenadineがGIRK1サブユニットに抑制作用を示すことを見出した.次に,キメラ分子や点変異体の網羅的解析により作用の構造基盤の同定を試みた.その結果,Ivermectinの活性化作用にはGIRK2のアミノ末端細胞内領域と第1膜貫通部の間に位置するSlide Helix上のIle82が重要であること,また,Terfenadineの抑制作用にはイオン選択性フィルターの背後に位置するPore Helix上のPhe137が重要であることを見出した.さらに,Ivermectinの活性化作用は,Gタンパク質には依存せず,PIP2を要すること,また,Terfenadineの結合とPIP2の結合には競合が見られることが明らかになった.