抄録
急性下後壁心筋梗塞患者41例においてベクトル心電図を記録し, 右室梗塞の合併の有無によるベクトル環の形態の違いを検討した.
右室梗塞合併群はQRS環初期上方持続時間が延長していた.QRS環の回転方向は左側面にて非合併群のほとんどが反時針式であったのに対し, 合併群は時針式および8字型 (反時針式以外) が多く, 左側面QRS環の回転方向で反時針式以外のものが右室梗塞を合併していたかどうかのsensitivity81%, specificity96%であった.左側面QRS環初期成分では時針式回転で上方へ描かれる型を示すとき, 右室梗塞を合併していたかどうかのsensitivity69%, specificity96%であった.また, QRS20ms瞬時ベクトルの左側面における角度では-135°より大きいものを右室梗塞合併の診断基準とした場合, sensitivity81%, specificity88%であった.これらは右室梗塞合併の診断に有用であると考えられた.