1992 年 12 巻 6 号 p. 713-723
新規I群抗不整脈薬pilsicainideの上室性不整脈に対する抑制機序を調べるため, 家兎房室結節に及ぼす本剤の電気生理学的作用を検討した.本剤20μMは房室結節のCa2+チャネルおよびK+チャネルのカイネティクスに影響することなく, これらのコンダクタンスを抑制した.Ca2+チャネルに対して本剤20μMは15%の静止時ブロックを生じ, 活性化状態よりも不活性化状態に強い親和性を有することから, 頻度および使用依存性にCa2+電流を遮断した.Ca2+チャネルの不活性化からの回復過程は, 本剤により遅延した.
Ca2+電流とK+電流の遮断効果は房室結節自発活動電流において, 最大脱分極速度の減少と活動電位持続時間の延長として発現した.以上, pilsicainideは房室結節伝導を抑制し, さらに不応期を延長することにより, 上室性頻脈性不整脈に対して抑制的に作用すると考えられた.