抄録
複数の心房粗動 (以下AF1, AF2, AF3) が記録され, かつそれらの誘発, 停止様式を電気生理学的に検討しえた1例を経験した.AF1の粗動周期は約340msecであり, その心房興奮順序は高位中隔右房内側 (以下HRAm) →低位外側右房 (以下LLRA) →低位中隔右房 (以下LSRA) →冠状静脈洞 (以下CS) の順であり, 心臓を前後方向からみて反時計方向に回旋していると考えられた.AF2の粗動周期は約260msecであり, 心房興奮順序はHHAm→LSRA→CS→LLRAの順 (時計方向に回旋) であった.AF3の粗動周期は約350msecであり, 心房興奮順序はHRAm→CS→LSRA→LLRAの順 (時計方向に回旋) であった.AF1はCSからの頻回刺激により誘発され, AF2とAF3はLLRAからの頻回刺激により誘発された.またAF1とAF2はともにLLRA-LSRA・CS間のブロック (すなわち下位右房におけるブロック) にて直接停止した.上記の誘発・停止様式は下位右房にリエントリー回路の一部とブロック部位を想定することにより説明可能であった.