心電図
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梗塞部残存虚血が心筋梗塞後の運動負荷ST上昇に与える影響
山本 忠彦宮崎 俊夫平野 豊猪木 達石川 欽司
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1998 年 18 巻 6 号 p. 817-823

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抄録
心筋梗塞後の運動負荷時梗塞部ST上昇は心筋虚血の関与なしに誘発可能なことが知られている.しかし, 心筋梗塞後には冠動脈狭窄がしばしば残存し, このような時には運動負荷ST上昇に虚血の関与が考えられる.そこで, 心筋虚血の有無やその部位により負荷時梗塞部ST上昇の程度に差があるか否かを検討した.対象は初回前壁梗塞56例で, 梗塞発症6~8週後にトレッドミル運動負荷タリウム201心筋シンチグラムを施行した.ST上昇はJ点で計測し, 最もST変化が大きかった誘導における安静時と最大負荷時のSTレベルの差をΔSTとした.心筋虚血の判定は負荷直後と4時間後のSPECT像およびbull's eye像を比較して行い, 再分布のない例を無虚血群, 梗塞部 (左前下行枝領域) に再分布があるものを梗塞部虚血群, 非梗塞部 (左回旋枝または右冠動脈領域) に再分布があるものを非梗塞部虚血群とし, これら3群間でST上昇の有無や程度を比較した.運動負荷にて0.1mV以上のST上昇は無虚血群の69%, 梗塞部虚血群の96%, 非梗塞部虚血群の33%に生じ, その頻度は3群間で差があった (p<0.Ol) .運動負荷前後でSTレベルを比較すると, 3群とも有意にSTが上昇したが, ST上昇の程度ΔSTは梗塞部虚血群0.22±0.08mVにおいて無虚血群0.12±0.06mVや非梗塞部虚血群0.08±0.04mVに比べ有意に高度であった (p<0.01) .前壁梗塞では高頻度に運動負荷で梗塞部STが上昇する.虚血がなくともSTは上昇するが, 梗塞部に虚血が生じるとST上昇は一層高度となり, 梗塞部の残存虚血は運動負荷ST上昇を増強すると考えた.
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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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