抄録
症例は80歳男性.通常型心房粗動に対し三尖弁輪一下大静脈間峡部中隔側 (SI) で線状焼灼を施行した.ブロックラインは不完全であり, 右房連続刺激により同じ周期の心房粗動が誘発された.冠静脈洞入口部上方で三尖弁輪に対し垂直に挿入している多極力テーテルにおいて, 粗動中の同部位の電位を焼灼前後で比較すると, 線状焼灼後の電位は焼灼前より60msec遅れていた, 冠静脈洞近位部でエントレインメントを施行すると心内興奮順序は同一で刺激後周期は粗動周期に一致した.Slのブロックラインより約8mm下方に通電部位を変更し, 冠静脈洞内の電極に心房波を伴わないで心房粗動が停止した.すべてのヒトにおいて冠静脈洞壁心筋組織の存在が知られているが, 本症例の粗動回路は峡部の心房筋から冠静脈洞壁心筋組織の筋層を介し, 左房筋を経て右房筋へと戻る経左房路を利用している可能性を示唆している.