心電図
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3.血管に対するK+チャネル開口薬の作用
今泉 祐治村木 克彦
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2006 年 26 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

冠血管拡張薬として広く用いられているニコランジルは, 一酸化窒素 (NO) ドナーとしての作用に加えてK+コンダクタンス増加を介した作用により, ハイブリツド型作用を示すことは1980年代前半から明らかにされてきた、ニコランジルで活性化される血管平滑筋のATP依存性K+ (KATP) チャネルの電気生理学的・薬理学的特徴は, 動脈・静脈また臓器によってかなり異なり複雑である, 動脈平滑筋KATPチャネルは, グリベンクラミドが効きにくくpinacidilやdiazoxideに対する感受性は高いこと, 分子構成としてはSUR2BとKir6.1の組み合わせが主であること, チヤネル活性が細胞内ATPで制御される性質に加えてヌクレオチド2リン酸 (NDP) で活性化されることなどの特徴を有する.SUR2BとKir6.1の組み合わせは, 抵抗動脈平滑筋での高発現が示唆されている.さらに一般に弾性血管よりも抵抗血管側の動脈平滑筋において電位依存性Ca2+チャネルの機能発現が高く, 張力の膜電位依存性が強いため, 細動脈においてKATPチャネル開口薬の弛緩作用がより強く, スルー現象の原因と考えられる, ニコランジルの冠動脈平滑筋弛緩作用にはKATPチャネル開口作用よりもNOドナー作用の寄与が大きいとされている.NOによる過分極の一部は, KATPチャネルとは別の大コンダクタンスCa2+依存性K+チャネル (BKチャネル) がcGMP依存性プロテインキナーゼによるリン酸化により開口確率が増大する機序も介している, つまり, ニコランジルによる冠動脈平滑筋の弛緩はKATPおよびBKチヤネルの開口作用によるものと考えられる.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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